Linuxディストリビュータであるターボリナックスは11月中旬、標準でMicrosoft OfficeなどのWindowsアプリケーションをそのまま動作させられる企業向けのクライアントOS「Turbolinux」の新版FUJI(開発コード名)を出荷する。10月21日の製品発表会で詳細を明らかにする。
「従来以上にBtoB(Business to Business)、つまり企業ユースを意識した」--。こう語るのは、ターボリナックスで製品マーケティングを担当する久保和広氏である。新版であるFUJIの目玉は、企業ユーザーが用いるMicrosoft OfficeやInternet ExplorerなどのWindowsアプリケーションを、Windows環境同様に使える点だ。「米Sun Microsystemsが開発したオフィス製品であるStarSuiteはMicrosoft Officeとの互換性が高いが、Excelのマクロ実行機能などで一部互換性が低い。Excelそのものを動作させればExcelとの互換性に悩まずに済む」(久保和広氏)。
WindowsアプリケーションをLinux上で動作させる機構には、フィリピンのSpecOps Labsが開発したWindowsエミュレーション環境ソフト「David」を採用した。Davidは、X86系パソコン向けのWindowsエミュレータである「Wine」をベースに、より簡単にWindowsアプリケーションを使えるようにするソフトである。ベースとなるWineは、Windowsのバイナリをロードして実行し、WindowsのAPI(Application Progrumming Interface)呼び出しをUnixとX-Window SystemのAPI呼び出しに変換するソフトだ。
Wineをそのまま使ってWindowsアプリケーションを使うのは業務ユーザーには敷居が高いが、Davidを使えば、アプリケーションのインストールや起動がWindows並に簡単になる。Davidはエミュレータ・エンジン本体と、個々のWindowsアプリケーションごとに用意するプラグインで構成する。Davidによって、Windowsと同等の使い勝手、すなわちWordやExcelのアイコンのクリックによるアプリケーションの起動や、Widowsが備える機構であるCD-ROMからの自動インストールなどが実現する。
企業向けクライアントPC市場はWindowsのプリインストール機が主流だが、ターボリナックスは新版FUJIをプリインストールしてもらえるよう、PCベンダー各社に働きかけていく。「FUJIのバイナリをプリインストールしてもらい、ライセンスを後から購入できるようなビジネス形態も考えている」(ターボリナックス)。