注目される3勉強会合同で開催された「メインライン化記念勉強会」
「TOMOYO Linuxメインライン化記念勉強会」が7月3日、東京・恵比寿の日本SGIで開催された。
TOMOYO Linuxは、NTTデータが開発したLinuxのセキュアモジュールとして、Linux標準カーネル(メインライン)の「version 2.6.30」に採用され、6月10日にリリースされた。これを記念して企画された勉強会は開催前から多くの関係者の間で注目を集め、当日はTOMOYOのプロジェクトメンバーと知己の人々も含め、120名を越える参加者が会場に集まった。
今回、この勉強会が話題となった背景には、セキュリティやLinuxの分野でその活動が注目されている3つの勉強会との合同企画として実施されたことがある。
協賛した「YLUGカーネル読書会」「セキュアOSユーザ会」「まっちゃ445勉強会」は、いずれもTOMOYO Linuxのメインライン化に至る過程で、プロジェクトを支援し、見守ってきた。
プログラムは、今回司会を務めた「まっちゃ445勉強会」代表、“まっちゃだいふく”こと八尾崇氏による開会の挨拶から始まった。
その後、富士通 Linuxソフトウェア開発統括部の小崎資広氏による「TOMOYOで学ぶKernel Watchの秘密 - どうやってマージ間近のパッチを見つけているのか -」と題した基調講演が行われ、今日の主役であるTOMOYO Linuxプロジェクトチームの成果報告の発表へと続いた。
「2.6.30マージ記念講演」としてNILFSとLIM/IMAも参加
また、「Linux version 2.6.30マージ記念講演」として、NILFSの開発者であるNTTサイバースペース研究所の小西隆介氏と、LIM/IMA開発者の日本IBM 東京基礎研究所の宗藤誠治氏が招待され、それぞれの開発内容について解説した。
NILFSは、連続スナップショット機能を装備し、過去の状態を丸ごと履歴として残せるのが特徴のLinux向けログ構造化ファイルシステム。一方のLIM/IMAは、ハードウェア耐タンパー性をもつセキュリティチップ「TPM」(Trusted Platform Module)と連携して、Trusted Chain(信用の連鎖)を作るためのプログラムの改ざん検知機能として、今回それぞれがLinux version 2.6.30に採用された。
さらに「セキュアOSユーザ会」から代表の海外浩平氏が、「YLUGカーネル読書会」からは主宰の吉岡弘隆氏がそれぞれ発表を行った。
海外氏は、Linuxのセキュアモジュール「SELinux」の開発に日本人として貢献し、「SE-PostgreSQL」の開発者でもある。氏の「強敵よ(ともよ)!〜SELinuxとの比較」と題された発表では、互いのバックボーンとなっているリファレンスモニタの考え方を通し、セキュアモジュールとしてのSELinuxとTOMOYO Linuxのそれぞれの特性が紹介された。
一方、吉岡氏は「カーネル読書会とTOMOYO Linux」と題した講演の中で、オープンソース開発におけるリアルな現場での議論の必要性を説き、外部から発信するイノベーションの実現に「勉強会」が果たす役割を語った。
この勉強会で特筆すべきは、発表者の顔ぶれだろう。これだけの関係者が一堂に会することは滅多にない。もちろんTOMOYO Linuxの交流の広さを示すものでもあるが、それも含めて、開催前から参加者たちの間で「伝説の勉強会」と呼ばれていたのもうなずける。
誌面に限りがあり、それぞれの発表を詳しく紹介することはできないが、勉強会の模様は参加者によって動画やレポートとして紹介されている。興味のある方は、ぜひ参照していただきたい。
「2ちゃんねる」での高レベルな議論に唖然
一方で、この勉強会が「伝説」と呼ばれる理由は、その内容にもあった。