オープンソースソフトの発展には「協調と競争が不可欠」

藤本京子(編集部)

2006-11-24 12:18

 日本、中国、韓国の3カ国でオープンソースソフトウェア(OSS)を推進すべく活動を続ける北東アジアOSS推進フォーラムが、11月21日より福岡にて開催された。2004年4月に第1回のフォーラムが中国・北京にて開催されて以来、今回のフォーラムは第5回目となる。

 第1回にて、OSSの普及と発展に向けて協力することに合意し、その後ワーキングループ(WG)を設置、具体的に活動を進めてきたOSS推進フォーラム。今回が5回目となるフォーラム初日の21日は、各WG内でこれまでの活動を総括する検討会が終日開かれ、22日にWGごとの活動内容や成果が発表された。

 22日の全体会合は、基調講演で幕を開けた。基調講演に立ったのは、日本OSS推進フォーラム 代表幹事の桑原洋氏、中国OSS推進連盟 主席のShouqun Lu氏、韓国OSS推進フォーラム 会長のKern Koh氏の3名だ。ここではまず、日本OSS推進フォーラム代表幹事 桑原氏の講演を紹介する。

桑原氏 基調講演に立つ日本OSS推進フォーラム代表幹事 桑原氏

 最初に桑原氏は、矢野経済研究所の調査結果を元に、日本のサーバ市場におけるLinuxのシェアについて語った。2005年10月に実施した調査によると、Linuxの利用率はすでにUNIXの利用率を超えていることがわかった。業種別の利用率も、すべて前年よりも高くなっており、中でも公益法人などにおいては、利用率が2004年の52%から2005年は86%に、金融・保険業界でも15%から32%と倍増しているという。

 桑原氏は、OSSが発展するために重要なこととして、「ユーザーが安心してOSSを利用できる環境を作る必要がある。また、開発の重複を避けるためにも協調が必要であると同時に、全体が発展するためには競争も不可欠だ」と述べた。

 また、日本OSS推進フォーラムについて桑原氏は、「理念は3つある。政府と民間が協力してOSS利用の拡大を図ること、OSSを既存プラットフォームの置き換えの選択肢として見てもらうよう、安全で信頼性の高いプラットフォームにすること、そして、中国や韓国はもちろん、世界中のコミュニティと協力してOSSの開発に貢献することだ」と述べ、今後もこの方針を維持していくとした。

 これまでの日本での成果として桑原氏は、政府関係のOSSシステムの調達について、利用促進に関する提言書を提出したことを挙げた。同氏は「日本での政府関連のOSS普及は遅れている」としているが、近いうちに適用が広がることを期待しているという。また、実証実験を行うための提言書も作り、「地方自治体ではすでに成果が出始めている」と桑原氏。今後は、普及の阻害要因となるものや、ユーザーが利用に躊躇している点が何かについて、情報共有を進めるとしている。

 次に桑原氏は、日本OSS推進フォーラムの3つの部会について説明した。その部会とは、サーバ、デスクトップ、人材育成の3つだ。

 まずサーバ部会では、OSSのシェアを市場トップにまで持っていきたいと考えているが、桑原氏は、「特にミッションクリティカル分野でのOSSの利用に対し、ユーザーはいまだ受身的だ。これを打破すれば普及が進むだろう」と述べている。そのためサーバ部会では、この分野での普及促進に向けたロードマップを策定中だ。また、インターネットを通じたOSS関連の情報発信サイト「OSS iPedia」でも、OSSの性能評価や信頼性評価、事例などを紹介するなどしている。同サイトは、2007年3月をめどに英語版の公開も予定している。

 デスクトップ部会は、自治体などでの実証実験を進めると同時に、大企業に対するアンケートも行い、デスクトップLinuxを普及させるにあたって阻害要因となっているものが何か調査中だ。また、人材育成に関しては、産官学の連携で、主に大学などの教育機関でOSSのカリキュラムを提案すべく計画中だ。

 桑原氏は、「今後も日本、中国、韓国の3カ国間でのOSS普及というゴールに向けて、世界のコミュニティとも連携しつつ活動を続ける」と述べ、講演を締めくくった。

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