企業のコラボレーション基盤として一時代を築いた「Lotus Notes/Domino」。国内には数多くのユーザーがいるが、最新版へのアップグレードをためらっているユーザーも少なくない。R4やR5で開発したアプリケーションの互換性が、R6.5以降で保証されなくなったというのも、その理由のひとつだ。
この「企業のコラボレーション基盤を考える」と題した連載では、特に旧バージョンのLotus Notes/Dominoユーザーが、この先10年を見据えて、今、何を考え、決断すべきなのかについて探っていく。
今回は、現状のユーザーが「Notes/Dominoを使い続ける」という選択肢について考えてみよう。
IBMはユーザーのために何を発信しているか
さて、Lotus Notes/Dominoを使い続けることを決断するとき、前回触れたようにアップグレードをするか、しないかの分岐点がある。実際、現段階ではアップグレードしないという選択をしている企業もある。ただ、今後、OS自体の変更や、連携する他のシステムとのギャップが生じることは避けられず、その時点でまた、何らかの選択を迫られるはずだ。では、「アップグレードして使い続ける」という選択はどうだろう。
先に開催された「LotusDay 2008」(2008年7月15日)の基調講演において、日本IBM専務執行役員、ソフトウェア事業担当の三浦浩氏は、Lotus Notes/Dominoの今後の方向性について、「Lotus Notes/Domino 8やLotus Sametime 8、IBM Mashup Centerを連携させ、エンタープライズ環境にWeb2.0のムーブメントをつなげたい」と華々しく語った。
また、Lotus事業部事業部長の澤田千尋氏は「Notes/Dominoの情報基盤を今後どのように利用するか、いかに新たなコラボレーションツールを取り入れていくかが重要」と述べている。たしかに、Lotus Notes/Dominoと新たなウェブテクノロジーの統合、新ツールとの連携といった分野は、IBMにとってビジネス的に最も「おいしい」ところだ。
だが、サポート切れとなったNotes/Dominoと、そこで動いている業務を抱え、R4やR5に留まっているユーザーに、こうしたメッセージはリアルに響くのだろうか。そこに、現状の多くのNotes/Dominoユーザーと、IBM Lotusとの意識のギャップを感じる。
イベントでは、Lotus Notes/Domino 8.0.1への移行について、日本IBM ソフトウェア開発研究所のLotusサービスが実施した事例が紹介された。ただ、当然と言えば当然だが、サポート切れとなっている「6.0.x」以前からの移行に関するコメントはなく、6.5.xから8.0.1への移行について問題ないことが、しっかりとアピールされた。