グループウェアを含めた企業のコラボレーション基盤が今後どうあるべきか。これは以前、ZDNet Japanの特集記事「企業のコラボレーション基盤を考える」でも長期にわたって問い続けてきた命題である。
みずほ情報総研のコンサルティング部でシニアマネジャーを務める吉川日出行氏は、「Notes/Dominoを使って理想のワークスタイルを構築するという試みは多くの企業で行われたが、その大半は求めるレベルに達しないか、あるいはシステムの限界を再認識したに過ぎなかった。結果的に、無秩序に蓄積した情報の中から、必要なものをいかにして収集すべきかについて悩みを抱えてしまった」と語り、理想と現実とのギャップが大きかった点を指摘する。
同氏は、2月下旬にみずほ情報総研とドリーム・アーツとの共催で実施された「ポータル型グループウェアによるNotes問題解決セミナー」で「グループウェアの今後、アフターノーツを考える」と題した講演を行い、データベースの乱立とメール中心のコラボレーションスタイルから脱し、共有すべき情報と対象者を整理することの重要性を訴えた。
「Notes限界説」を裏付ける5つの要因
企業内情報共有基盤の構築や情報活用を主なテーマとする吉川氏は、アナリストの視点から、Notes/Dominoの限界について次の5つの要因を挙げる。その1つが「活用頻度の減少」だ。その原因には、近年のシステムと比較したレスポンスの悪さや、Notes独自のユーザーインターフェースの使い勝手の悪さなどがあるという。
2つ目が「運用、維持管理コスト」の問題だ。パッチ適用やメジャーバージョンアップの際には、作り込んだNotesアプリケーションの動作確認を行う必要があり、場合によっては作り直す必要も出てくる。また、これまでNotesの運用管理を手がけてきた技術者が高齢化し、人件費が上がっている点も無視できない。
3つ目がウェブ対応の問題だ。本来、クライアント/サーバシステムとしての出自を持つNotes/Dominoは、後発のシステムと比べて、ウェブシステムとの親和性やウェブ上で利用する場合のパフォーマンスに関して分が悪い。また、Notes DBのウェブへの移行作業も負荷が大きいといったデメリットがある。
4つ目が独自技術への不安だ。Notes/Domino自体の基本的なアーキテクチャは、Lotus時代から受け継がれた独自の技術がベースとなっており、その将来性や拡張性が懸念される。また、他のシステムとの連携にミドルウェアが必要な点も問題となる。
そして5つ目が、EUC/EUD(End User Computing/End User Developing)の功罪である。エンドユーザー自らの手によるアプリケーション開発を容易にすることで、業務の効率化を図るEUC/EUDは、Notesの際だった特徴であり、現在においても多くのユーザーが高く評価する部分である。しかしその半面、適切な管理がないままにEUC/EUDを放置した企業では、無秩序にデータベースやNotesアプリケーションが乱立してしまい、内部統制にも問題が発生するといった負の面が表われた。それと同時に、Notesに蓄積した情報の検索性の低さもクローズアップされてしまった。
もちろんIBMも、Notes/Dominoにおいて、業界標準のウェブ開発環境への対応やウェブブラウザ上での操作性向上を積極的に推し進めていることをアピールしている。ウェブアクセスクライアントである「iNotes」の機能拡張や、リアルタイムコラボレーションツールである「Lotus Sametime」との連携強化、タスク管理ツールである「Lotus Connectionsアクティビティー」との統合などのほか、ユーザーにセルフサービスが可能なマッシュアップ環境を提供して、既存アプリケーションを統合し、それをIT部門がWebSphere Portalで管理するといったウェブ業務環境の構築がテーマとなっている。
しかし、吉川氏は「これらはウェブの世界ではもはや当たり前に実現されている。あえてNotesに閉じた形で構築する必要はなく、ウェブ標準技術を使って統合すればいいのではないだろうか」と指摘する。