デスクトップ分野でデファクトスタンダードとなっているMicrosoftのWindows製品が、組み込み機器の分野でも勢力を見せ始めている。国内で2005年に発売され、現在も品薄状態が続いているウィルコムのPHS端末「W-ZERO3」もWindowsベースの製品だ。
米国Microsoftでモバイル&エンベッデッドデバイス マーケティンググループ担当ゼネラルマネージャーを務めるScott Horn氏によると、同社の組み込み製品向けビジネスは「非常に好調」であるという。同社の組み込み市場におけるビジネスの現状を同氏に聞いた。
--Microsoftの組み込みデバイス用ソフトウェアプラットフォームには、Windows MobileとWindows Embeddedがありますね。この2つの違いについて教えてください。
はい。まずWindows Mobileは、携帯電話やPDAのためのプラットフォームです。パーソナルライフや仕事環境を便利にすることを目的に作られたこのプラットフォームは、Microsoft OfficeやExchangeなどの製品との接続性が非常に高いものです。私もデスクトップPCにあるコンタクトリストを携帯電話に同期して使っています。
Windows Mobileのビジネスは3年半前に始まりました。当時はヨーロッパの携帯電話キャリア1社のみで採用されていたのですが、今ではMotorolaやPalm、Hewlett-Packardといった米国企業はもちろん、日本のシャープや台湾のHigh Tech Computer(HTC)にAsus、韓国のSamsungなどアジアのメーカーも含め、47社のビジネスパートナーが存在します。
2005年には、日本でもWindows Mobileにとって画期的な出来事がありました。それはウィルコムの「W-ZERO3」の発売です。また、2006年1月にはNTTドコモがHTCのWindows Mobile端末を導入すると発表していますし、ボーダフォンを買収したソフトバンクもWindows Mobile搭載機を採用すると表明しています。日本は重要な市場ですから、こうした動きは非常に歓迎すべきことです。
現在世界にはWindows Mobileベースの携帯電話が約100種類ほどあり、1万8000ものアプリケーションが同OS上で走っています。われわれが安定したソフトウェアを提供することで、ハードウェアベンダーはハードの開発に注力でき、多くの端末を短期間で市場に投入できるのです。
この市場は成長市場ですが、Microsoftとしても事業の伸び率は他事業よりも非常に高く、第2四半期の売上げの部門成長率は前年同期比で40%以上でした。また、Windows Mobileビジネスにおいては、携帯電話の出荷台数が前年同期比で70%もの伸び率を示しました。2005年の1年間で出荷したWindows Mobileデバイスは、600万台に達しています。
--では、もうひとつの組み込みOSであるWindows Embeddedはどのようなデバイスに搭載されていますか。
Windows Embeddedは、ロボットやレジ、医療機器システム、家電など幅広いデバイスで使われるものです。Windows Mobileの場合はどのデバイスでも同じ形態のOSとして提供されますが、Windows Embeddedはデバイスの種類が多いこともあり、われわれが提供するのはビルディングブロック(構成部品)となります。デバイスメーカーは、このビルディングブロックを自由に組み合わせ、デバイスに組み入れることになります。
Windows Embedded製品の中には、Windows CEとWindows XP Embedded、そしてPOS端末に最適化されたWindows Embedded for Point of Service(WEPOS)の3種類があります。WEPOSは2005年に発表された新しいOSですが、われわれと深い付き合いのある東芝テックや富士通など、小売業界に製品を提供する企業からのニーズに応える形で生まれました。