「SASの姿を一言で表すとすれば、それはビジネス・アナリティクス・ソリューション・プロバイダーとなる。ツールを提供するベンダーではなく、ソリューションを提供するプロバイダーであることが他社にはない強みだ」――
SAS Instituteの上席副社長 兼 最高技術責任者(CTO)、Keith Collins氏はこう切り出す。先頃発表した2009年の業績によれば、同社は34年間連続の増収増益を達成。経済環境が悪化するなかでも、SASの事業が好調に推移していることを裏付けた。それは、ビジネスの課題を解決するソリューションをSASが提供し続けていることの証ともいえよう。
来日したCollins氏に、SASの強み、製品戦略、企業戦略と方針について話を聞いた。
この1年で経営環境は激変しました。あなたはCIOカスタマー・アドバイザリ・ボードを設置するなど、ユーザーの声を聞く立場にもあります。今、どんな変化を感じますか?
Collins:残念ながらその変化は、私が望んでいるものとは異なります。一言でいえば、経済環境の変化のなかで取締役の意識は変化しているのに、CIOの意識はそれほど変化していないということです。
CIOはもっとビジネス上の課題を把握し、さまざまなスキルを学ばなければならない。ビジネスの現場に対して「どんな情報が必要か?」と問うと、「すべての情報がほしい」という。だが、それは適切な回答ではありません。CIOが社内やチームに対して予測や最適化をもっと教育すれば、回答が変わってくるはずです。本来ならば、ビジネスの現場でどういう課題が発生しているのかを前提にして、問題解決に必要なデータを集めて分析することが必要となる。これができていない。経済環境が悪化するなかで、求められる要件は大きく変化しています。アナリティクスを活用して、ビジネスをより効果的に推進することに注目が集まっています。
SASは2009年で創業以来34年連続での増収増益を達成しました。その理由はなんでしょうか?
Collins:一言でいえば、顧客のクリティカルな要求に対応し続けてきた点にあります。言い換えれば、データの重要性を最も理解しているのがSASであり、そのためのソリューションを提供できる唯一のベンダーであるといえます。顧客は経済環境が悪くなれば、分析を重視し、そこからどのように収益をあげるのかという点にますます注目します。これに応えることができるのがSASの特徴です。
SASは対外的にはナンバーワンBIベンダーと言われます。しかし、当社自らが「SASはBIベンダーである」と言ったことはありません。BIビジネスが目立つかもしれませんが、SASはアナリティクス、データインテグレーション、情報デリバリという複数のコアを持っており、それらをひとつのフレームワークの下で提供できる。買収によって事業範囲を拡大してきた競合他社は、それぞれに独立した生い立ちがあるため、どうしてもツールにフォーカスした議論になりがち。しかし、当社はこれらを取りまとめた一つのソリューションを提案できる。そこがSASの強みでもあります。