SaaS・ASPが日本にとって重要である理由--SaaS・ASPの現状

大川淳 2007年09月14日 20時14分

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 インターネットにより、コンピュータソフトのさまざまな機能をサービスとして提供するSaaS(Software as a Service)が勢いを増している。この「SaaS」という言葉自体が注目を集めたのは最近だが、それ以前、1999年以来、この領域を産業として振興する活動を行っている団体がASPIC Japan(Application Service Provider Industry Consortium Japan)だ。インターネットのブロードバンド化に合わせて、ソフトウェアの利用の形態、あり方がひとつの岐路を迎えているなか、ASPIC Japanの構想する未来像とはどのようなものなのだろうか。

 SaaSが新たなIT用語として脚光を浴び始めたのは2006年前後からだが、それ以前から、「ソフトウェア」を「サービス」として提供する事業形態は「ASP(Application Service Provider)」と呼ばれていた。SaaSという言葉の登場以降、業界内では「SaaSは、かつてのASPとどこが異なるのか」について、論争めいたものがあったという。

津田邦和氏 「中小企業のIT化を進めるためにはASP/SaaSの普及が必須」と語るASPIC Japan常務理事の津田邦和氏。

 しかし、ASPIC Japanの常務理事である津田邦和氏は「ASP、SaaS、オンデマンド/ユーティリティコンピューティング等々、さまざまな言葉があるが、これらは同義。1964年ごろ、MIT(Massachusetts Institute of Technology:マサチューセッツ工科大学)の学者が最初に提唱したユーティリティコンピューティングの概念が最初で、それが1997〜1998年ごろに、米国でASPと言われるようになった。しかし、当初は特定ベンダーのブランドのひとつでしかなかった。最近では、SaaSとASPの違いとして、API公開とカスタマイザビリティの有無を指摘する意見もあるが、これらはかつてのASPにもあったもの。その点のみをもってASPとSaaSを区別しようとする意見はナンセンスだ」と明快に語る。

 ASPIC JapanではASPを「特定および不特定ユーザーが必要とするシステム機能を、ネットワークを通じて提供するサービス、あるいは、そうしたサービスを提供するビジネスモデル」と広く定義している。もちろん、これには現在SaaSと呼ばれるものも含まれるため、本稿では「ASP/SaaS」と表記する。

ASP/SaaSの4つの利点

 ASP/SaaSには、どのような利点があるのか。津田氏は「ASP/SaaSには4つのポイントがある」と指摘する。

 1点目は、人、ハード/ソフトといったITにまつわるコストを、実質的に「割り勘」にして、低減させる効果がある点だ。

 2点目は、日本企業の大部分を占める中小企業のIT化が現在よりも進むことである。「日本企業の9割以上は中小だが、ここでのIT化は進んでいない。サーバやソフトを買ったとしても、導入、運用が想像以上に難しいためだ。ビジネスのために使うITの面倒をすべて自社でみるのは、ほとんどの中小企業にとって不可能だ。ASP/SaaSを活用することによって、中小企業はITを利用しながら、リソースをビジネスに集中させることができる」と津田氏は言う。

 3点目は、「セキュリティ」の確保が容易になることである。「ビジネスとしてITを使い始めると、データのセキュリティを維持するのは予想以上に大変になる。突然の停電といった事態が起これば、事業継続性も脅かされる。バックアップや自家発電を活用する動きもあるが、これらも中小企業が備えるのは困難だ。SaaSの形態であれば、データやシステムをデータセンターなど、外部に置くので安全性が高くなる。かつては、重要なデータを社外に置くことに抵抗を感じるケースも多かったようだが、最近ではむしろ、設備の整った信頼のおけるデータセンターに預けるほうが安全だと認識されるようになりつつある」(津田氏)。

 最後の4点目は、ASP/SaaSにより、新しいビジネスモデルが構築される可能性があることだ。システム構築スタイルの多様化や、サブスクリプション課金といった、ASP/SaaSならではの特徴を生かした、従来にないビジネスチャンスが生まれつつあるのだ。

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