日立ソフトウェアエンジニアリング(日立ソフト)とセールスフォース・ドットコムは、日本郵政公社の「お問い合わせ等報告システム」を構築した。同システムは、セールスフォースのSaaS(Software as a Service)プラットフォーム、「Salesforce Platform Edition」を基盤とし、ユーザー数は4万に達する大規模なもの。両社では「オンデマンド・プラットフォームとしては世界最大級」としている。
「お問い合わせ等報告システム」は、日本郵政公社が、2007年10月の民営化に向け構築を進めているもので、顧客からの問い合わせ内容や対応履歴などを、登録、集計、分析することができる。
これらの情報は従来、郵便局で電子メールや「紙」として管理・報告されていたが、同システムにより、郵便局、支社、本社間で緊密に情報共有できるようになり、顧客からの要望への対応が迅速化され、履歴管理や分析レポートにより業務改善やサービス向上などが期待できるという。また、データアクセス権限の制御、ログイン管理、監査証跡の記録なども可能であり、内部統制も強化される。
同報告システムは、ウェブ業務の基盤として「Salesforce Platform Edition」を利用している。「Platform Edition」は基本的に、Salesforceのアプリケーションの開発・実行環境とCRMとを分離した形態で提供され、ユーザーはオンデマンドアプリケーションの開発・交換・配布などの基幹システムである「AppExchange」のアプリケーションや、そのほか独自開発のソフトを稼動させることができる。今回のシステムは、こうした柔軟性をフルに活用し、「すでに用意されている標準アプリケーションのプログラムをカスタマイズし、特殊な機能、特定の機能は、Ajax、Javaにより作りこんでいる」(日立ソフト)という。
日立ソフトでは、「Salesforce Platform Edition」を選んだ要因として、開発期間が短期間で済み、導入コストの低減が可能。関連システムとの連携、拡張性が確保されていること。UIのわかりやすさ、セキュリティ面などを挙げている。
日立ソフト、産業システム事業部長の植村明氏は「開発期間は約2カ月、要員は10人弱ほど。単純比較は難しいが、一般的にこのくらいのシステムをプラットフォームが何もない状態から作り始めると、1年くらいかかるのではないか」と話す。今回のプロジェクトでは、日立ソフトが全体を統括、基本的な設定は両者で行い、他システムとの連携にかかわる開発は日立ソフトが、機能拡張プログラムの開発はセールスフォースが担当した。
「Salesforce Platform Edition」は、これまでのCRM/SFAに留まらず、幅広い業務で利用できる環境を整え、ユーザー層の裾野拡大を図ったものだ。また、必要となるアプリケーションはユーザー企業や、今回の日立ソフトのような事業者が開発できるため、パートナー企業にもビジネスの機会が創出されることになる。セールスフォース社長の宇陀栄次氏は「CRM/SFAではなく、プラットフォームとして採用されたことの意味は大きい。また、パートナーのビジネスチャンスも広がる」と述べた。