グリーン化、高速化、柔軟性--20年後のデータセンターを予測する(後編) - (page 2)

文:David Braue(ZDNet Australia) 川村インターナショナル

2008-10-16 13:30

 コンピューティングの能力が原子サイズにまで進歩していくとすれば、将来の実用化が見込まれるナノテクノロジと量子物理学の2つについても触れておかねばならない。ナノテクはすでにさまざまな業界で技術革新の原動力となっている。今後数年のうちに確実に実用化され、信じられないほどの小さな要素を多数集めることで、コンピュータやストレージシステムが構築されるだろう。

 製造プロセスが向上するにつれて、サーバテクノロジに普及するであろう光インターコネクトを、ナノテクによる技術革新が補完するようになるはずだ。

 量子コンピュータは長い間理論ばかりが先行していたが、量子ビット(電気的なビットに相当する量子力学での用語)の制御に関する最近の技術進歩によって、既存システムよりも何倍も強力と考えられる量子コンピュータの役割の大きさが改めて示されるようになってきた。

 D-Wave Systemsは2007年11月に、28量子ビットで構成される量子コンピュータのデモを行った。今後数年内に大幅な規模の拡大が計画されている。もし同社の開発が成功すれば、データセンター2世代分の期間で、オプティカルシステムさえも陳腐化させてしまう可能性がある。

ポリモーフィック型データセンター:コンピューティングの組み立てキット

 データセンターは今後5年以内にメモリやプロセッサなどの「部品の貯蔵庫」のような形態になるかもしれない。変動するワークロードに応じて部品をリアルタイムで組み替えるというわけだ。Hewlett-Packard(HP)はこのような考え方をポリモーフィック(多様質あるいは多形質)コンピューティングと呼んでいる。

 企業のコンピューティングニーズは毎日変化していると、HPでビジネスクリティカルシステムのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャを務めるMartin Fink氏は言う。同氏によれば、次世代のデータセンターは、特定の問題の解決に必要な何らかの形に変容する汎用的なシステムで構成される、と言う。恋人とデートに出かけるときにはフェラーリになり、買い物に行くときには小型トラックに変身する、そんなクルマを買うようなものだとFink氏。

 Fink氏によると、ポリモーフィックなデータセンターでは、ある壁にはたくさんのCPUが並んでいて、別の壁には通信インフラストラクチャ、別の壁にはストレージ、といった具合に部品が並んでいるのだという。これらの構成部品は、ワークロードに対処するために、必要最小限のリソースだけを使って、リアルタイムに組み立てられる。たとえばワークロードの処理中にいずれかの構成部品(たとえばメモリ)が不足したら供給するという仕組みだ。

 Fink氏はこの種の機能は5年程度で実用化されるだろうと考えていて、実際に米国と英国に研究開発チームが組織されている。しかし、このようなコンピューティング形態が具現化される前に、2つの障壁を越えなければならないと同氏は言う。

 1つは前にも少し触れたが、距離が大きく離れたCPUやメモリといったさまざまな構成部品を一緒に動作させるには、オプティカル接続機能を向上させなければならないという点だ。

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