レビン委員長は9月の聴聞会の際、「一部の米国企業のハイパー節税策が米政府の財政赤字の大きな要因になっている」「この税金逃れのツケが、ふつうの米国民に負担増という形でまわされている」との見方を口にした、という点が興味深い。
同小委員会では、調査終了後に結果を踏まえて「多岐にわたるレコメンデーション」をまとめる、といった記述もある。
大晦日にまとまった財政再建に向けた妥協案は「一時しのぎ」「2カ月ほどの時間稼ぎ」という見方が有力で、税制見直しと歳出削減をめぐる議論がしばらくは続きそうなこと(オバマ政権としては連邦政府の債務額上限の引き上げを3月上旬までに認めさせる必要がある)、さらに法人税制の大幅な見直しが、企業にとっても、政府にとっても、他のステークホルダーにとっても数年来の課題となっていることなども考え合わせると、ごく限られた残り時間のなかで——しかもその間に1月21日の大統領就任式、その後の議会での年頭教書演説など、重要イベントが目白押し——、この小委員会がまとめる報告の内容が比較的早い時期に大きな注目を集める可能性も考えられる。あるいは反対に、あまりの重要事項であるため、法人税見直しをめぐる議論は債務額上限をめぐる交渉の片が付いた後で……という可能性もまた充分にありそうだ。
WIREDの記事には「アップルの税負担が最大で280億ドル以上にのぼる可能性も」といった見出しが躍っている。この金額は2012年9月末時点でアップルの国外での繰延法人税債務(米国外の利益に対するもの)があわせて285億ドルに上るという点を踏まえ、「これをもし全額収めることになったら……」と仮定した場合のものだから、一種の「釣り見出し」といも言えるだろう。
こちらの記事には目を惹く数字がいくつか含まれている。曰く、
「2012年度末の現金残高1210億ドル、そのうち約7割にあたる826億ドルが米国外(の子会社)に」
「同年度に米国外で収めた税金は利益の1.9%」
「今年夏からはじめた株式配当金の支払いに、今後3年間で450億ドルを予定」
「アップルやグーグル、マイクロソフトらの利害を代表するロビー団体“WIN America”には160人以上のロビイストが在籍」
ただし、この記事でいちばん興味深いのは、これらの企業に対する風向きの変化、あるいは風当たりの強まりだろう。