「具体的にSDNでどういうことができるのかを、まだ実際に動いている機械で見せるチャンスはあまりありません。SDN ShowCaseでは、ベンダー、インテグレーター、サービスプロバイダが一堂に会して、実際に動いているユースケースやソリューションを紹介する場として用意しています」と話す佃氏。
「今回、会場には全部で7本の共有ラックを設置しましたが、当初はその倍くらいになりそうだったのを、数カ月前から調整して絞り込んできました。この数からも、SDNが立ち上がりつつあると実感しています」と加えた
30種類のデモは、データセンタ・クラウド事業者、通信事業者、企業の、主に3種類のユーザーを想定した内容となっている。
現状、SDNにはまだ課題が残っている。特に大きな課題とされるのが、マルチベンダー環境での連携だ。
「ソフトウェア化されるだけに、以前に比べると見えにくくなってきて、障害解析などの際に課題となってきているような印象があります」と三木氏は指摘する。
SDNは、サーバインフラのみならずネットワークインフラも統合して管理する方向へ向かっていく。これまではネットワークの専門家だけがネットワークインフラの管理に携わっていたのに対し、SDNを取り入れた環境ではサーバインフラと一体となった新たな運用が求められてくる。
「良くも悪くも分担していたのが、SDNによって運用の統合が行われると、その連動を管理するのが難しくなってきます。この難しさをどう解決していくかというデモも、今回のSDN ShowCaseには取り入れられています」(佃氏)
関谷氏も、「SDNの現状は、まだまだ熟していないという状況です」と語る。
「作業工程にしても、買ってきてパッケージしてすぐ使える、といったような段階ではありません。いままでできていたことをやるだけでも大変、という状況です。単一ベンダーなら一気通貫でできるようになってきていますが、相互接続性についてはまだ荒削りで、マルチベンダー環境では無限大に難しさが拡大してしまいます。
また、さまざまなリクワイアメントのあるユーザーにそれぞれ適した設定を提供するのも大変です。今回のSDN ShowCaseでは、あらかじめ設定済みの仮想マシンを提供し、プロビジョニングを行う、しかもそれをマルチベンダーで、といったデモを行っています。マルチベンダーについては、これからOpenFlow 1.3対応機器が主流になってくれば加速するかと思います」(関谷氏)
OpenFlowの最新バージョン、1.3は2012年に仕様が公開された。それまで使えなかったIPv6やQoSなど数々の重要な機能をサポートし、これからの商用ネットワークで使う基礎が固まったバージョンといえるだろう。OpenFlowの仕様策定を担う団体、Open Networking Foundation(ONF)では、このバージョンを長期安定版仕様として位置付けている。そして現在、この1.3準拠の製品を各ベンダーが市場に投入しつつある状況だ。その相互接続性検証が、直近の大きな課題といえる。