三国大洋のスクラップブック

「アップルがディズニーを買う日」は来るのか(後編) - (page 3)

三国大洋

2014-05-27 08:00

 単純に合計すると、CMCSA+TWCがざっと1724億2000万ドル、T+DTVが2253億7000万ドルで、AAPLに比べて3分の1もしくは半分以下と、体力的には大きな差がある。ただ、こうした各社が政治力などを駆使して寡占状態の維持、状況を図っていることは前に触れた通り。

 Disneyについては、Appleの手持ち資金(3月末時点の現金残高)が1560億ドルだったので、これを全部使う(足らない部分はさらに株式交換で補う)覚悟があれば買えない額ではない(「手持ち資金のうち、米国内にあるのはわずか180億ドルに過ぎない」とか、そういったややこしい話は脇に置くとして)。

 TrefisのサイトにあるDisneyのグラフを見ると、ESPNの占める割合は評価額とEBITDAがそれぞれ約3割5分前後、今後のフリーキャッシュフローの推定では5割台から4割台となっている。

 こうして数字を並べてみると、「AppleがDisneyを買う」あるいは「ESPNなどのコンテンツ事業だけを買う」というのは、少なくとも近い将来にはほぼあり得ない感じもする。あるとすれば、それこそ捨て身の“一発逆転パス(hail mary pass)”となろう。

 ただ、ComcastがNBAUniversal買収に際して一筆入れた「自社のコンテンツ配信を優遇しない」という約束もいずれ期限切れがくる(2018年)。AT&TでもDirecTV買収にあたってそういう一筆を入れようとしている(買収完了後3年は…という条件付きで)。ましてや、そうした現状維持の前提となる「ネットワーク中立性」の原則が変更される可能性さえ出てきてもいる。

 書けば書くほど、新しい疑問も浮かんできてしまうし、肝心なパズルのコマがまだ欠けているという感触もあるが、いずれにしてもすでにスケールの大きな歯車が回り始めている、そのことはほぼ間違いないと思われる。実に面白い世の中になってきたもので、しばらく先まで目が離せそうにない。

(敬称略)

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