三国大洋のスクラップブック

アップルの次の“ブロックバスター”製品--そのビジネスモデルを考える

三国大洋 2014年04月25日 08時00分

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 長年Wall Street Journal(WSJ)でテクノロジ系の看板コラムニストとして活躍してきたWalt Mossberg。そのMossbergが書いた、どことなくAppleを擁護するような内容のコラムが、現在の根城であるRe/codeに米国時間4月22日に掲載されていた。

 「Appleが映画スタジオに似ている理由(“Why Apple Is Like a Movie Studio”)」と題するコラムで、Steve Jobsとも親しかったMossbergは「映画業界では、一度大ヒット作品(“ブロックバスター”)が生まれたら、その後しばらくは続編をリリースし続けていく、というやり方が定着している」「そんな商売の柱(“franchise”)を何年かに一度生み出せれば、映画会社は十分食べていける」などと述べた上で、こう続ける。

 「Appleの場合はiMac、iPod、iPhone、iPadなど、その時々に新しいカテゴリを切り開いてきた製品が、このブロックバスター作品に相当する」「毎年リリースされる新バージョンは、単なる続編に過ぎない(だからといって決してつまらないものではない)」「しかも続編の方が、オリジナルよりもたくさん稼ぐ=興行収入が良いといった場合も少なくない」「最新のブロックバスターであるオリジナルのiPadが世に出てからもう4年が経つが、iPodの登場からiPhoneの登場までに約6年もかかっていたことを思うと、それほど大騒ぎする必要もないのではないか」と自説を展開している。

 このコラムが、どうしてこのタイミングで掲載されることになったのかは正直よく判らない。

 3月半ばに刊行されていた『Haunted Empire: Apple After Steve Jobs』――書いたのは元WSJのApple番記者であるYukari Iwatani Kaneで、JobsのいなくなったAppleはかつての栄光あるいは勢いを取り戻せないのではないかといった内容――それに対するFarhad Manjoo(NYTimes)の反論――には言及しているものの、いずれも3月中のもので、Mossbergのコラムが、この議論を直接受けて書かれたものとは思えない。

 同時に、Mossbergの立場からすれば何らかの情報――ただしまだ表に出せない類いのもの――をつかんでいても不思議はないように思えるが、あるいは翌日に控えたAppleの決算発表であまりぱっとしない結果が発表されることを見越して、つい筆を取りたくなったのか、などとも想像してしまう。

 それはさておき。

 Mossbergはコラムの後半で「『Appleはもうだめだろう』という連中の見方はどうみても時期尚早」という考えを示した上で、「どんな大ヒットシリーズの映画でも、いずれは観客から飽きられる時が来る」「そんな時のために、次のブロックバスター作品(=まったく新しいカテゴリの製品)を見つけておいた方がいい」として、具体的にこれから出てきそうな可能性のあるものを3つほど挙げている。

***

「次に狙うのは健康医療分野」という可能性

 この3つが「より大型のiPhone」「テレビ関連製品(現行のApple TVは大きく異なるもの)」、そして「ウェアラブル関連製品(フィットネストラッカーやスマートウォッチの類い)」と聞くと、日頃からAppleの話題を追いかけている人はガッカリするかもしれない(筆者はガッカリした)。いずれもすでにたくさんの噂が流れているものだからだ。

 同時に、Nike(AppleのTim Cookも社外取締役)がハードウェア関連の事業を縮小し、ソフトウェアの部分にリソースを集中していく、といった話題も流れていたばかりだから、「一番ワクワクするような可能性は健康管理の分野(“the most exciting possibility is monitoring and managing health”)」というMossbergの指摘は見逃せない。

 おまけに「『いろんな製品がすでに存在しているけれど、どれも取り立てて優れていたりするわけではない』といった状況にある新分野に参入するのは、Appleが得意としてきたパターン」などとMossbergは付け加えていさえする。

 もっとも、フィットネストラッカーやスマートウォッチだけに限定すると市場規模は(スマートフォンとの比較で)まだごく小さい。

 たとえば、Smartwatch Groupというスイスの調査会社が2月に発表していたデータでは、2013年の合計出荷台数が約315万台、市場規模が7億1100万ドル(いずれも世界全体)で、散々ダメ出しされていたSamsungの「Galaxy Gear」(初代)が出荷台数(推定80万台)でも金額(同2億4000万ドル)でも首位となっている。割と知名度の高い製品の出荷台数については、Nikeの「Fuelband」が40万台、「Fitbit」が45万台、Pebbleの製品が30万台などとなっている。

 またNPD Groupから2014年初めに出ていた(米小売市場に限定した)調査結果でも、2013年のフィットネストラッカーの市場規模は推定2億3800万ドルで、ブランド別のシェアはFitbitsが68%、Jawboneの「UP」が19%、NikeのFuelbandが10%などとなっている。

 いずれのデータからも“まだ夜明け前”だった感じがよく伝わってくる。

 Mossbergのコラムの中には、2人の同僚が1カ月ほど前に書いた記事への言及があるが、この中には健康医療(healthcare)分野に関するちょっとびっくりするような数字が出ている。

 そのひとつは、調査会社Forresterのアナリストがまとめた市場規模の見積もりで、同分野の年間支出額は2012年に全世界で7兆1000億ドル(GDPの10.1%)、米国だけでも2兆9000億ドル(同17.9%)に達していたというもの。この数字の下には「人口比率でわずか5%程度に過ぎない米国が、医療費では全体の4割も使っている」という記述もある。

 もうひとつは、それだけの規模に達している米の健康医療分野で、支出額が2014年にさらに3.8%も増加するという予想。1990年代から2000年代初めに記録した2桁の増加、2000~2009年の年率平均6.9%の増加に比べれば、この3.8%という増加率はかなり下がっているともいえるが、ただ分母が大きくなっている分、増える金額(絶対額)も相当大きいことは想像がつく。

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