Intelが社内でAR(Augmented Reality、拡張現実)用ヘッドセット(ゴーグル)のプロトタイプを開発しているという話が、少し前になるが3月2日に報じられていた。
・Intel Working on Augmented-Reality Headset他の媒体でもこの話題に言及した記事がいくつか出ている。
・Intel is building a headset so that it doesn't lose the augmented reality race ・Intel reportedly planning augmented reality headset with RealSense 3Dモバイル端末(スマートフォンやタブレット)の分野でARM陣営の各社――QualcommやSamsung、MediaTekなどに大きく遅れをとってしまったIntelが、新たな成長が期待できる分野としてウェアラブル分野に力を入れてきていることは既に広く報じられている通り。最近では、PC市場で販売台数の前年比二桁減少が続く中、長年の稼ぎ頭であったPC向けプロセッサのビジネスはよくて頭打ち。
また、データセンター用サーバ向けのプロセッサの売り上げ増加という明るい材料もあるものの、同分野では一部の大口顧客――Google、Amazon、Facebookなどへの依存度の高さを指摘する見方もあり、いずれにしても新しいビジネスのネタを1つでも多く欲しい状況と言っていいと思う。
WSJは、IntelがこのARヘッドセットを(製品開発用の)リファレンスとして他の端末メーカーに提供しようしていること、そしてこのプロトタイプに同社の「RealSense」技術(奥行き認識技術)が搭載されることなどを記しているが、それ以上の詳しいことはよくわからない。
ただ、別の部分では「IntelがAR分野に3億ドル?5億ドル程度の投資(企業買収など)を行っている」とする外部のアナリストの推定や、Daqriという名前のロサンゼルスのベンチャー企業と共同で、AR機能を付加した産業用のヘルメットを開発しているといった話も紹介されている。
ARやVR(Virtual Reality)に使われるヘッドセットの分野は、ここに来て各社の動きが活発化している。年初にはOculus(Facebook傘下)がPCと組み合わせて動かす「Rift」の予約受付を開始(発売は3月末)、またOculusの仕組みを使ったSamsungの「Gear VR」も2月下旬のMobile World Congressで2世代目の機種が発表されていた(「Gear VR」は中にスマートフォン「Galaxy」をはめ込んで使うもの)。
一方、Microsoftは3月初旬にARヘッドセット「HoloLens」開発者版の予約受付を開始した。また、すでに投入予定が明かされているソニーの「PlayStation VR」やHTCの「VIVE」なども正式発表される。さらにGoogleが5月の「I/O」カンファレンスで、やはりスマートフォンなどと組み合わせて使うようなVR端末を披露するのではないかとの噂も流れている。
なお、MWCでサムスンが行った製品発表イベントに登場したMarc Zuckerbergが「SocialVR」の可能性を力説していたことも大きな注目を集めていた。「Social VR」とは「いずれFacebookのユーザー同士がVRを介してコミュニケーションするようになる」ということだろう。
Facebookが目指すVRとソーシャルの融合--「Social VR」チーム創設で見せる意気込みなお、Intelが「RealSense」の技術をドローンにも役立てようとしていることも見逃せない。1月はじめには「RealSense」3Dカメラを搭載するドローンを開発するドイツのベンチャー企業を買収したことが一部でニュースになっていた。今のところ、この技術の用途は「ドローンの目(視覚)」ともいえる部分に限られているようだが、いずれはそれが人間の目の代わりを務めるような日もやってくるのかも知れない。