三国大洋のスクラップブック

アップルのサービスビジネスにおける3つの具体的な問題点

三国大洋

2016-05-14 07:00

 先日、Appleが1ー3月期の決算を発表し、売上が13年ぶりの前年割れするなど、予想以上の苦戦ぶりであることが伝わってきていた。

 苦戦とはいっても依然として四半期に10億ドルを超える利益をあげ、「売れ行き不調」なiPhoneにしても3カ月で5000万台を超える数をまいているので、今日明日にどうこうという話では無論ないが、それにしても売り上げが前年比13%減(前年の580億ドルから505億ドル)で、また売上高、一株当たり利益のいずれもアナリストの予想に届かなかったということで、相当な大ニュースであることに違いない。

 屋台骨であるiPhoneの売上が18%減、しばらく前から失速しているiPadの売上がさらに19%減、そしてMacの売り上げが9%減と、ハードウェアビジネスがいずれも大きく落ち込んだ中で、唯一明るい材料とされていたのが「サービス」に分類されるビジネス(売上が前年比20%増の約60億ドルに)。

 「iTunes」「AppStore」「iCloud」のようなオンラインの取り組みのほか、「ApplePay」や「AppleCare」などもひっくるめたこのカテゴリーの売り上げが、今回初めてMacの売上を追い越したそうだ。

 だが、このサービス、特にオンライン関連の事業について「ハードウェアビジネスに最適化したAppleの組織形態ではなかなかうまくいかないのではないか」、あるいは「サービス・ビジネスをさらに成長させていくためにそろそろ事業部制を採り入れてもいいのではないか」といった主旨のエッセイを、BenThompsonという独立系アナリストが公開していた。

APPLE’S ORGANIZATIONAL CROSSROADS - Stratechery

 「iPhoneに続く次の大ヒット商品をAppleはどうする?」といった感じの記事が目立つなかで、Appleの組織形態に焦点を当てたものはあまりない。かなりややこしい話と感じられたが、今回はこのエッセイのことをできるだけわかり易く紹介してみようと思う。

強まる風当たり

 しばらく前からAppleに対する風当たりが強まっていることは既報の通りで、売り上げ全体の約3分の2を占めるiPhoneまで頭打ちとなれば、それもしかたのないことに思えるし、また2012~2014年半ば(のiPhone 6発売)までの状況に似ていなくもないようにも見える。

 一方、当時と現在とでは、スマートフォン市場全体の成長鈍化や先進国市場での買い換え周期の長期化、さらにMacとiPhoneとの間で「挟み撃ち」にあった格好のiPadの販売台数=売り上げ低下などの違いもある。

 発売からまる1年が経過した「Apple Watch」にしても、初年度に推定60億ドル近い売上を記録したようだが、売上全体に占める割合はまだ5%以下だから、柱に育つとしてももうしばらくは時間がかかりそうで、その後に続く新製品の目星は立っていないから(電気自動車開発のような噂はたくさんあるけれど)、世間がつい心配したくなるのも不思議はない。

 大黒柱の「iPhone」で「6」に匹敵するような大ヒット機種がまた出てくれば、風向きが一転する可能性も高そうだが、ただしいまのところは「大幅なデザイン変更(OLED画面の搭載など)を加えたiPhone新機種の投入は来年以降」という噂などがもっぱらで、今年秋の投入が見込まれる新機種には「買い換えを見送ってもいいか」という声なども散見されるような状況である。

 「これまでは新機種が出ると必ず手に入れていた」という9to5Mac(ブログ媒体)の編集者が、最近iPhone 6 Plusから買い換えたiPhone SEの出来具合や使い勝手に満足したあまり、そんな主旨の記事を書いていた。

 こうした流れを受けて、AppleのTim Cook(CEO)とLuca Maestri(CFO)が1月にあった決算発表の中で「サービスのカテゴリの成長ぶりにアナリストらの注意を向けようとしていた」とThompsonはまず記した上で、しかしiPhoneをはじめとするデバイス(端末)の開発に最適化した組織では、サービス事業はなかなかうまくいかないのではないか、などと疑義を呈してしている。

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