Appleの職能制組織(Functional Organization)
Appleには製品別の事業部がなく、それぞれの部門を取り仕切る幹部というのもいない。代わりにいるのは、デザイン担当のJony Ive、業務担当のJeff Williams、マーケティング担当のPhil Schillerなど、いずれも職能に基づく責任者=経営幹部で、たとえば「iPhone事業部(責任者)」といったものは存在しない。
Thompsonは、故Steve JobsがApple復帰直後――製品ラインに大なたを振るう前――に導入したというこの職能制組織の長所について「ハードウェア、アプリケーション、サービスが不可分に結びついた、ユーザーにとって直感的に使える、使いやすい製品」を開発しやすい点を挙げている。
また「Mac事業部といったものが存在していたら、iPadを開発・市場投入するのははるかに難しかったかもしれない」などとも記している。
そういう長所をもつ職能制組織は、企業の規模がある程度小さく、提供する製品やサービスの種類(数ではない点に注意)も少ない間は比較的うまく機能する。だが、たいていの成功したベンチャー企業がそうであったように、やがてそうしたやり方がうまく機能しなくなるときがくる。そう書いたThompsonは、うまくいかなくなった有名な例として、一世紀前にあったDuPontのケースを挙げている。