三国大洋のスクラップブック

アマゾン「Alexa」が注目を集める理由--「スマートホーム・ハブ」の本命?

三国大洋

2016-04-24 07:09

 Amazonの「Echo」というネット接続機能付きスピーカー端末に関する話題を米媒体で見かけることが昨年の暮れあたりから増えている。

 「EchoはAmazonの『隠れたヒット商品』」などとQUARTZで書かれていたのが2月のはじめのことだが、最近でも同シリーズの新製品「Tab」「Dot」を取り上げたレビュー記事がWSJやWIREDに掲載されていた。またその前にはRe/codeのポッドキャストでこれらの製品を取り上げていた――そのなかには出演者らとAmazonのAI(人工知能)「Alexa」との掛け合いの様子を録音したシーンもあった。

 Amazonによるハードウェア関連の取り組みというと、いまだにどこか「副業」という印象がある。同じ「副業」でもAmazon Web Service――パブリッククラウド分野でMicrosoftやGoogleといった競合に先行するAWSと比べると、そういう印象がなおさら強くしてしまう。電子書籍端末「Kindle」のような大成功例がある一方、期待されながら結局大失敗に終わったスマートフォン「FirePhone」のような例もあるからだろうか。

 Jeff Bezosが自らハンズオンで開発に関わったとされる「FirePhone」に比べると、「Echo」はひと言でいって地味な存在――筒型の外見からはふつうのBluetoothスピーカーとどこが違うのか、といったことは分からないし、ユーザーが実際に話しかけてみるまでは、どんなことができるかも分からない。

 「2014年秋にリリースされた」というが、リリース当時に大きく取り沙汰された、という覚えもない。念のため、The Vergeにあるレビュー記事(2015年1月のもの)をみてみると、例えば「購入からしばらく時間が経つと、Echoを音楽やポッドキャストを聞くのに時々使うくらいで、それ以外の目的に使うのを止めてしまうユーザーが大半ではないか」といったことが書かれていたりすることもわかる。

 Amazonは自社製ハードウェアの販売台数を明らかにしたことがないので、Echoがこれまでにどれくらい売れたのかはよくわからない。ただ、先週にはSeattle Timesに「累計販売台数は推定300万台」とする市場調査会社のレポートを伝えた記事も掲載されていた。

 Echoの価格は180ドルだから、売上額自体はさほど大きなものでもないだろうが、すでにそれだけのインストールベースが存在するという点のほうがむしろ重要なのは改めて言うまでもない。

 また実際に使っているユーザーの人気や評価も高いようで、Amazon.comにあるEchoの商品ページにはすでに約3万5000件を超えるレビューが上がっており(4月14日時点)、またその3分の2が五つ星の評価となっていたりもする。

 なお、最初に発売されたEchoは常時音声コマンドを受け付ける据え置き型のスピーカー、それに対してDotはEchoからBluetoothスピーカー部分を除いたもの(音質とは関係ない小型スピーカーは内蔵)、また「Tab」はEchoを一回りくらい小さくして携帯用にしたもの(ボタンを押さないと音声コマンドを受け付けない)といった違いがあるそうだ。

 そんなEchoシリーズ(のハードウェア)+Alexa(ソフトウェア)が注目を集める理由と思われるものを3つほど以下に書き出してみる。

1)音声(会話)ベースの「ボット」

 Echoやその派生商品の特徴のひとつがこの「音声によるやりとり」---音声コマンドとフィードバックというは前から何度か見聞きしていた。

 Echoは常時スタンバイしていて、ユーザーの呼び掛け――「Alexa!」もしくは「Amazon!」という音声コマンドを聞き取ると音声認識を開始し、素速く答えを返すとか、指示された処理(買い物リストにアイテムを追加するなど)を行うといった仕組みの説明をよく見かける。

 ただ、それが「実際にどんな具合なのか」「AppleのSiriなどとどう違うのか」あるいは「ハンズフリーで用事を足せるのは、そんなに便利なことなのか」といった疑問が浮かんで、なかなか疑問が解決できずにいたが、前述のRe/codeのポッドキャストにある掛け合いの様子を聞くと、「確かに注目を集めるだけのことはありそう」という感じも伝わってくる。

 最近では、MicrosoftやFacebookあたりでも「チャットボット」関連の事柄に力を入れていく考えを明らかにしていた。AmazonのAlexaも、音声によるやりとりという入力・出力の形の違いはあるものの、基本的には同じ方向性の技術と思える。

 そんなEcho+Alexaを使ってできることは、「今日の天気は?」「Amazonで(商品名)を注文して」「なにか音楽を流して」など当初はごく限られていた。ところが、外部サービスなどとの提携もあって、この「音声だけでできること」がこの1年余りの間に約300種類まで増えたという。

 なお、Alexaは「Fire TV」にも組み込まれて、コンテンツの検索などに使われているそうだが、FireTV経由で連携する照明や空調の制御までできるかどうかというのはよく分からない。

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