同市の中央のIT部門が発表した情報によれば、レガシーインフラの問題を解決するための取り組みに、これまでに8200万ユーロが費やされている。
報告書によれば、クライアントPCに対する新たなソフトウェアリリースの設定とテストを行う責任は、中央のIT部門と各部署のIT部門で分担されており、このことが、十分な性能やセキュリティ、最新の機能を提供できない原因になっている。また、この作業の分担が、テストの繰り返しや、クライアントのアップグレードを処理するための専門知識が不均一に分散している状況を招いているという。
クライアントPCのOSのライフサイクルは非常に長く、新しいクライアントの導入には最大で2年半かかっている。
報告書では、クライアントソフトウェアの改良は頻繁に行われたが、アップグレードのペースが遅いために、すべてのユーザーに提供されるまでには長い時間がかかっていると述べられている。
クライアントPCのアップデート頻度が不安定なのは、ミュンヘン市議会で使用されているOSのバージョンがまちまちであることを反映している。最新のクライアントでは「Ubuntu 12.04 LTS」ベースの「LiMux 5.x」が使用されており、これが全体の45%を占めているが、32%ではバージョン4.1が使用されており、23%では4.0が使用されている。
Windowsマシンでは、77%で「Windows 7」が使用されており、9%で「Windows XP」または「Windows Vista」が、14%で「Windows 2000」が使用されている。この報告書は、各マシンとインストールされているソフトウェアの設定が部門によって異なること、Windowsマシンの管理手順がLiMuxと比べて確立されていないことなどの理由により、Windowsクライアントの管理の方が難しいという印象を与えるものになっている。
ミュンヘン市は現在、2019年9月までにWindows XPおよびWindows 2000から脱却するという、1660万ユーロ規模のプロジェクトを進めている。
ミュンヘン市がWindows XPとWindows 2000を使い続けてきたのは、大気汚染抑制のための排出ガス監視や、洪水防止など、市にとって不可欠な業務で使われている41のアプリケーションの実行に、これらのOSが必要であるためだ。
サポート対象から外れたOSの安全性を確保するため、同市はこれらのOSを仮想マシンやスタンドアロンのコンピュータで実行すると同時に、「制限付きデータ交換」と呼ばれる手法や、隔離システム、およびその他の保護手段を使用している。
ミュンヘン市の主張
報告書の中間とりまとめ案に書かれている内容の一部は、市議会が過去に発表した情報の繰り返しだ。ミュンヘン市のIT部門メンバーであるJan-Marek Glogowski氏は2015年に、UbuntuのLTSバージョンのリリース間隔が長いということは(LTSの新バージョンは2年おきにリリースされる)、市当局がUbuntuベースのLiMuxをアップデートして、新しいハードウェアをサポートする必要があることを意味していると述べている。
報告書では、リリースの遅延による不都合が大きいのはLiMuxの方か、Windowsの方かは特定されていないが、Glogowski氏が2015年に行った講演では、市当局は職員に新バージョンのLiMuxを提供するのにかかる時間を短縮したいと考えていると述べている。
Glogowski氏によれば、LiMux 5のリリースには2年半かかっているという。
「2014年に12.04に対する作業を開始したが、バグが多かったため、最初のポイントリリースを待つ必要があった」と同氏は述べている。