ASMでiPadが共用できる
Appleでは、学校でiPadを共用で使うことを想定したASM(Apple School Manager)なるサービスを提供している。学校でiPadを使う場合、必ずしも一人一台の環境を確保できるとは限らない。例えばiPadを科学の授業で使う場合に、複数の生徒が一台のiPadを使いまわすことがある。以前は、iPadに複数のアカウントをもたせることができないため、同じアカウントで同じ環境を確保しなくてはならなかったが、ASMの登場により、複数のアカウントを使い分けることで、各生徒向けの環境を提供できるようになったのだ。
また、教員用のiPadから生徒のiPadを管理できるようにもなっている。全員が同じページを見るように、といったことも簡単にできるようになった。以前はサードパーティ製のクラウドサービスを使わないとできなかったことが、Apple独自のサービスとして無償で提供され始めたのは、多くの学校で評価されているところだ。
本サービスは、現在は学校に特化しているが、今後企業向けに提供されることに期待したい。企業内で一台のiPadをシェアで利用する場合に、大変重宝する機能だと言える。
JR東日本グループのiPad活用
JR東日本の乗務員がiPad miniを使い始めたのが2013年。当初は、何らかの理由で遅延した際の時刻表配布用のツールとして活用が始まった。あれから4年。現在は、ターミナル駅でコインロッカーの場所を聞きに来た顧客に、現在の空き状況を知らせることができる仕組みを作り、さらには列車点検にも活用するなど、さまざまな活用がされている。
また、駅員のiPadには駅構内の案内図、電車の運行状況を確認できる「モバイルATOS」といった独自のアプリ、さらには駅周辺の案内図、筆談アプリ(図)など、多くの便利ツールで顧客満足度を向上させることに努めている。
JR東日本というと交通という印象が強いが、グループ会社にはショッピングセンター、ホテル、駅弁製造販売、喫茶店、レストランなど、あらゆる事業体が存在するため、その活用が大きく広がっていることは容易に想像できる。一説には、数万台とも言われるiPadが設備、点検、顧客サービス、列車および貨物車両運行と、大変幅広く利用されている。ビデオ会議も、以前利用していたV-CUBEからiPadの標準機能であるFaceTime活用に切り替えられている部署があるほどだ。
つまり、独自のアプリを利用するところがあるものの、iPadが標準的に持っている機能自体が、JR東日本グループ各社にとって、重要な機能なのであろう。
筆者が最近感じるのは、JR東日本のような大企業ではなく、読者諸氏があまり聞き覚えのないような中小企業のiPad活用が非常に増えている、ということだ。それは、決して大企業を模倣したものではなく、さまざまなツール、端末を検討した結果、ここまでに紹介したようなiPad単体だけではない仕組み、サービスとのセットを鑑みた上で導入に至っているということなのだ。
iPad単体だけでも使える機能はあるし、さらにMDMなどの外部サービスと連携させることで、さらに活用の場が広がる。最近では、カフェなどのレジでiPadが使われていることを目にしたことがある人が多いのではないだろうか。いわゆるレジスター機能だけではなくPOS(point of sales)と呼ばれる売り上げを管理するアプリケーションをインストールしており、旧来のレジスターのように場所を取ることもない。手軽に使える一方で、パソコンのように利用することもできる。そういった幅広い、かつセキュリティ面を含めて安定的に使えると判断している企業が増えているということなのだ。
次回は、iPadを含めたアップル製品の、企業での管理について考えてみたい。