「Worldwide Developers Conference」(WWDC)というのは、Appleが技術者・開発者を主な対象とし、最新技術の説明を行うために毎年6月に開催しているイベントだ。Apple関連製品の技術説明のほか、CEOらによる基調講演や新製品発表なども行われる。世界中の技術者が情報交換を行う機会でもある。
27回目になる2016年のWWDCには、74カ国から5000人以上が集まり、また18歳以下の参加者が120人いることが発表された。
日本からもオンラインで視聴できる基調講演では、今年はハードウェアの発表は一切なかったことにガッカリする声があったのだが、実は2015年も同様に製品の発表はされていない。今年は、4つのOSである「watchOS」「tvOS」「macOS(Mac用次期OSからの呼称が変更された)」「iOS」の順に、それぞれの新バージョンが発表されたのだが、筆者にとっては、ハードウェアよりも興味深い発表であった。今回は、特に本コラムに密接なmacOSおよびiOSの新機能について見ていこう。
iOSを強力にサポートする新Mac用OS「macOS」
Mac向けOSの新バージョンでは、名称が小文字の“macOS”に変わったことからも、iOSを強力にサポートしていく姿勢が感じられる。現在の最新バージョンはEl Capitanだが、秋にリリースされるとするOSはSierraと名付けられた。シェラネバダ山脈を意味する言葉だ。
筆者は、iPadやiPhoneにParallels Desktopというアプリケーションを入れており、そこから社内にあるMacのデスクトップにアクセスしているが、次期パージョンからはそれがアップル純正機能で実現される。まさに、シームレスな使い方が出来るようになるのだ。
また、個人向けクラウドサービスと考えられているiCloudとの連携がさらに強化された。Macのストレージが足りなくなってくると、自動的にiCloudに逃がす機能が追加されたのだ。これらを活用すべく、企業でもiCloudをどのように運用するか、運用手順の見直しなどが実用になってくるだろう。情報システムのメンバーが苦手だという理由だけで、今まで避けてきた課題だが、正面から取り組まないといけない時代になってきていると言えるだろう。
また、Macに取り込んだ写真は、これまでも誰が写っているかを判別する機能はあったのだが、これからはディープラーニングを使って解析されるようになり、物体の判別、つまり山なのか海なのか、乗用車なのか、トラックなのか、といったことが認識されるようになる。
そして、MacでもSiriという音声アシスタントが使えるようになった。Siriは、今までiOS、watchOS、tvOSでは利用できていたのだが、今回のアップデートでMacでも利用できるようになったのだ。
Siriを使うと「先月、北海道で撮影した写真」と言うだけで、Macの中に保存している膨大な数の写真の中から、必要な写真を即座に見つけ出してくれる。さらに面白いのは、表示された結果に対して「そのうち◯◯さんが写っている写真だけ」と追加で指示を出せば、該当の写真を絞り込んで表示することもできるのだ。
一昔前なら、PCに向かって話しかける行為は、周りからするとおかしな行動だったのだが、今日ではもはや合理的な行動だと言える。同じことを、キーボード、マウスやトラックパッドの操作で実現するためには、どれだけ大変かを考えてみると、音声を使うことの合理性も分かるのではないだろうか。音声を利用したことがない読者は、この機会に働き方の見直しを含めて、活用を模索してはどうだろうか。