コンサルティング現場のカラクリ

IT部門の苦悩(7)--まだまだベンダーに揚げ足を取られ足元を見られている

宮本認(ビズオース )

2018-04-21 07:30

(本記事はBizauthが提供する「BA BLOG」からの転載です)

まだまだベンダーに揚げ足を取られ、足元を見られている

 いくらお金を無駄遣いするとはいいつつも、長い不景気の時代を経て、一定のコストカットは行われてきている。バブル時代に絶好調を謳歌してきたベンダーも、業績は徐々に悪化した。日本ではまだまだ大手ベンダーの支配力は絶大だが、業績を著しく落としているベンダーもあるし、一つの失敗プロジェクトが会社の業績を左右し営業赤字に陥るような時代になっている。

 昔なら、ベンダーも予算担当を豪遊させたり、家を訪問して頼み事をしたり、失敗プロジェクトの責任を取る変わりにパソコンを大量に提供して許してもらうといったようなことができた。しかし、今ではコンプライアンス的にも予算的にもそんなことはできず、ベンダーも日々、厳しい営業にさらされつつある。この流れは、益々厳しくなっていくであろう。

 ただし、まだまだベンダーの言いなりになっている領域もある。それは、ハードウェア、ソフトウェアの更改と保守料だ。IT業界は、ハードウェアに限らず、ソフトウェアにもサポート期限というものがある。何か問題が起きたときに、保証をしてくれるものである。

 このビジネスモデルは、ゼロックスが編み出したと聞いたことがある。要は、コピー機そのものの販売よりも、コピー機の保守料や消耗品であるトナーや紙で利益を出すモデルだ。キヤノンの御手洗会長が、トナーの自社工場を大分に作ったときに、「これでやっと消耗品ビジネスができる」とおっしゃった記事を読んだことがある。すなわち、ハードウェアやソフトウェアのベンダーはこの保守料が安定ビジネスになるのだ。

 保守料の世界は、依然としてブラックな世界だ。ハードウェアとソフトウェアで保守の内容は違っているのだが、なぜそこまでお金がかかるのか、そこは意外と分かっていないことが多い。IT部門も一定の理解を示している。トラブルが起きたとき、頼りになるのはベンダーなのだ。ベンダーに「なんとかしてくれ」と指示を出し、後はヤキモキしながら「直りました!」という報告を待つ。そうした無理をお願いするためにも、少々ベンダーの言いなりになる部分があっても構わないという気持ちはわからなくもない。

 ハードウェアの保守は、定期保守と随時保守がある。定期保守は、故障を未然に防ぐよう定期点検をしてあらかじめ問題を発見しようというものだ。一方、随時保守は障害が起きたときに即時に故障対応をしようとするものだ。

 保守料というのは通常、ハードウェアの価格の15%〜20%を年額で請求される。結構な値段である。一回当たり○○万円と決められていることもある。こうしたコストを使うと、5年ほどたてば、結局ハードウェアをもう一つ買うことになる。そう考えると、すこぶる高い。

 なぜ、そういった価格が必要となるのか。それは、ベンダーの保守ネットワークの維持と交換部品のストックのためである。ベンダーの保守ネットワークとは、各ベンダーが持つ保守部隊の会社である。こうした保守会社に何千人というCEがおり、そのための費用として保守料が請求されることとなる。交換部品とて、ただではない。保管コストもかかる。もっとも、ベンダーからしてみると大変な商売ではある。

 故障をしないために、定期保守をするのだが、この定期保守というものは本当に胡散臭い。やっていることはほとんど掃除だ。確かに、機械の整備・点検の基本は掃除をすることだが、この掃除に数万円を費やしている計算だ。さらに、随時保守、すなわち障害対応は、顧客から「すぐ直せ」と言われてしまう。日本全国津々浦々にネットワークを張り巡らしている企業の場合、ベンダーからしてみると、そこにも対応できなければならない。離島でも対応することが求められる。それは、コストが高くなる。

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