(本記事はBizauthが提供する「BA BLOG」からの転載です)
新しいことは、十中八九できない
筆者が社会人になった当時は、情報システムのオンライン化が普及しているときで、情報システムの業務改善効果が画期的に進む時代だった。発生点入力、すなわちそれまで伝票を書く仕事と、パンチというデータを作る業務が分離していた業務が、伝票を書く人がシステム入力を進める時代が始まりつつある時代だった。
そこから、システムとしてERP(統合基幹業務システム)というデータベースのお化けのような仕組みが広がり、さらにインターネットという世の中をネットワークでつなぐ仕組みの広がりに相まって、データとネットワークを使う仕組みが広がるようになった。CRM(顧客関係管理)やeCommerce(電子商取引)などはこの代表例ではないだろうか。
一方、システムの委託形態もあわせて進化した。ハードウェア(HW)をプログラム付で買う時代に始まり、HWとプログラムが分離し、システムインテグレーションというサービス形態が出始めた。さらには、システムを、アウトソーシングという業務として委託をする形態が広がり、餅は餅屋でという掛け声で、ベンダーへの委託範囲が広がった。さらには、システムは自前で持つという所有形態だったのが、クラウドというベンダーが持つインフラを利用させるという形態が広がった。
こうした、ITの進化・発展は、当初経営やユーザーは預かり知らざるところだったが、段々と知識を得るようになり、自分たちの会社のシステムはどうなっているのかを、気にするようになってきた。ベンダーサイドのマーケティング手法も、システム部門へ営業攻勢を仕掛けるものから、ユーザー会などのユーザー交流を進めたり、イベントを主催したり、ビジネス書に事例を載せたり、TVコマーシャルで「クラウド」などが出るようになり、経営者やユーザーが「耳年増」になることに拍車がかかっている。
こうなると、経営やユーザー部門が、「やりたい」と思うことが湧き上がってくる。当然の流れだ。顧客サービスを向上させるためということもあれば、営業やマーケティングを高度化したり、ネットチャネルを増やしたり。こうした、業務改革ニーズが次から次への湧き上がり、システム部門にこうしたサービスを始めたいと相談が来るようになる。経営の場合は、さしずめ検討命令だろうか。
しかし、ユーザー部門が情報システム部門に相談すると、できない理由を山ほど言い返されることは、まだまだ起きているようだ。人が足りない、量的に足りないだけでなく、新しいことを考えられるような人は本当に少ない。現行システムの改修や連携が多数だったり、そもそもデータがないなど、導入に莫大な支出がかかってしまうなんてことは、ザラである。また、できれば今すぐやりたいと伝えても、できるのは早くて2年後と言われる。もう、茫然とするしかない。
あくまで程度問題なのであるが、筆者の所感では、欧米の企業は「経営の独自性は強い」が、「業務の独自性」が少ない。日本だと逆かもしれない。すなわち、横並びの経営がされていることが多い反面、仕事の仕方は独自性が強い。だから、欧米がパッケージソフトをそのまま導入して業務を進めるのに対し、日本ではパッケージに多くのカスタマイズをつけて導入をしようとする。
すなわち欧米企業は、自社に既に導入された普及製品に、普及しつつある製品を追加するため、新ソリューションの導入は比較的容易だ。そういう連携は新製品でも考えてあることが多い。例えが悪いと思うが、iPhoneに既製品のカバーを付けるようなものだろう(笑)。しかし、日本では、iPhone自体にゴテゴテにデコレーションが付けられているようなものなので、そこにカバーをつけたいといっても、「無理」と答えられてしまう。
希望をする側のユーザーとて、そこまで深く考えていないケースも多い。だから、すべてニーズを聞くべきとは言えない。しかし、数字を背負う部門が、思い通りに仕事ができないというのは、問題とは言える。やはり、武器がないと働けないのは事実なのだが、その武器を整えることができないのが、現実だろう。