最近のクラウドコンピューティング市場やエンタープライズIT市場は非常に友好的な雰囲気で溢れている。筆者は、エンタープライズIT企業同士が公然と睦み合う光景に、どう向き合えばいいのかよく分からなくなっている。
Microsoftの最高経営責任者(CEO)Satya Nadella氏は、Red Hat主催のカンファレンスで登壇した。SAPは主な大手パブリッククラウド企業と関係を結び、同社の「HANA」プラットフォームをそれらのサービスとつなげるという。Dell TechnologiesはVMwareを中心としたクラウド戦略を展開し、Amazon Web Services(AWS)などの大手クラウド企業と結びついている。Microsoftはオープンソースに傾倒している。
ハイブリッドの分野でも、SaaSの分野でも、パブリッククラウドの分野でも、各企業はこれまでは考えられなかったような相手と良好な関係を築いており、古くからのライバル同士が手を結んでいる。われわれのようなIT業界の記者にとって、このような関係性を目にするというのは難しい状況だ。記事はゼロサム競争のシナリオの方が書きやすいし、面白くなる。以前は、AWSを全面採用する企業が増えれば、Microsoft AzureとGoogle Cloudが損失を被るという単純な図式だった。しかし今や世界はマルチクラウドに向かっており、1つの企業が三大パブリッククラウドすべてを利用していることも珍しくない。
マルチクラウドの世界への合理的な対応は、パートナーシップを組むことだ。今はパイの大きさが足りなくなることはない。このような時代が来ることは予見可能だった。クラウドの世界がゼロサムではなくなりつつあることを予感させた最初の兆候は、AWSとVMwareの間に非常に収益性の高いパートナーシップが生まれたことだろう。
もともとクラウドに期待されていたことは、APIを介してさまざまなサービスを1つのソフトウェアスイートのように結びつけることであり、その意味ではクラウド業界は非常にうまく行っている。コンテナへの移行も、パートナーシップとベストオブブリード戦略の興隆に一役買っている。