レッドハットは6月21日、5月上旬に米ボストンで開催の「Red Hat Summit」で発表した製品やサービスなどに関する日本向け説明会を開き、「Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 8」や「Red Hat OpenShift 4」の主な新機能などを紹介した。IBMによる買収完了を控え、改めて同社の現状や今後についての言及がなされた。
RHEL 8の概要
Red Hat OpenShift 4の概要
同社は近年“オープンハイブリッドクラウド”をビジョンに掲げる。オンプレミスからマルチクラウド、さらにはコンテナーやサーバーレスに至るあらゆる環境をカバーし、その基盤を担うというのがRHELの位置付けだ。2019年中のIBMによる買収完了を控えたRed HatにとってRHEL 8は、独立企業としての最後のリリースになる。
RHEL 8での主な機能概要は既報の通りだが、今回の説明会にはIBMでコグニティブシステムやAIX、IBM iといった同社の基幹製品やソリューションの技術開発や事業を長らく担当してきたというStefanie Chris氏が登壇した。現在はRed HatでRHELビジネスユニット バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務める。
Red Hat RHELビジネスユニット バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのStefanie Chris氏
Chris氏は、同社が行った調査を引用し、「89%のITリーダーが自社のIT戦略にオープンソースが必要と考える」「69%のITリーダーがこの1年でオープンソースの使用が増えたと回答」とトピックを紹介。企業ユーザーのこうした現状を踏まえ、RHELが約70%のシェアを有するなど、オープンソースディストリビューターとしての同社の実績を強調した。
同社は、Red Hat Summitにおいて「RHELが10兆ドルのビジネスに貢献している」というIDCの調査結果を発表している。Chris氏は、この話題を踏まえて、RHELのエコシステムが世界中の企業のビジネスに大きな影響力と貢献をもたらしていると述べた。RHELは、このエコシステムにおける2019年の収益を800億ドル以上促進させ、その効果は2023年に1500億ドル以上に拡大させるという。また同じ期間に、RHEL関連の雇用が60万人以上増えるとも予想する。
IBMがRed Hatの買収を表明して以降、その成否に関するさまざまな推測が今なお続く。両社はさまざまな場でトップレベルから買収の意義や方向性などを繰り返し説明しており、基本的にはRed Hatの独立性や“オープンハイブリッドクラウド”の戦略などは維持され、IBMもマルチクラウド時代を見据えてRed Hatがそのテクノロジーの中核を担う重要な存在と位置付ける。
説明会後に、Chris氏へ改めて買収に伴うREHLの変化などを尋ねた。変化については、上述のようにIBMのサポートを獲得することで、「REHLのエコシステムが企業のビジネスに与える影響は大きなものになり、ユーザーにより貢献するものになっていく」と述べる一方、「RHEL 8やOpenShift 4がコンテナーの利用拡大に対応しているように、企業のIT環境の変化を踏まえて進化してきたテクノロジーへのアプローチはこれまで通り一切変わらない」とも語った。
Red Hat Enterprise Linuxのエコシステムが世界のビジネスにく寄与しており、IBMによる買収もこれに大きな効果をもたらすとChris氏は説明する
Chris氏のコメントは、これまでにIBMとRed Hatが発信しているメッセージと同様だが、日本市場に対して改めて両社の方針を発信した。