レッドハットは4月24日、同社の2020年度(2020年2月期)の事業戦略を発表した。「ハイブリッドクラウド基盤」「クラウドネイティブなアプリケーション開発」「IT運用管理の自動化」を3本柱に掲げ、富士通やNECらパートナーとの新たな施策も紹介した。
戦略を説明した代表取締役社長の望月弘一氏によれば、2019年度の戦略方針はハイブリッドクラウドの“実現”であり、2020年度はハイブリッドクラウドの“実践”だという。3本柱とするテーマは2019年度と同じながら、2019年度が企業におけるオンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドへの移行を重視したのに対し、2020年度はハイブリッドクラウドを利用していく“実践”に重きを置いている。
レッドハットが2020年度の事業戦略で掲げる3本柱のテーマ
2019年度の事業動向について望月氏は、ハイブリッドクラウド基盤領域では、「Red Hat OpenStack Platform」が、通信事業者における5GやNFV(ネットワーク機能仮想化)の構築、あるいは企業のプライベートクラウドの構築で広く採用が進んだと報告した。クラウドネイティブなアプリケーション開発の領域では、「Red Hat OpenShift」採用の半数が金融などだったという。新規領域となるAnsible関連の運用管理ソリューション事業も、サービスプロバイダー顧客を中心に採用が始まっており、堅実な立ち上がりを見せているとした。
2020年度の事業戦略は、2019年度の実績を踏まえた継続路線となる。望月氏は、最新の顧客調査の結果を紹介。2年以内に複数のクラウドの採用を予定する顧客が65%に上り、また、2年以内にコンテナーベースのアプリケーションを導入する予定の顧客が74%に上るとした。ハイブリッドクラウドを“実践”する顧客はまだ少数派であり、今後数年間で本格化するニーズへの的確な対応を重視している。
3本柱のテーマごとの主な施策は、「ハイブリッドクラウド基盤」では、Red Hat OpenStack PlatformとRed Hat OpenShiftの組み合わせを推進する。従来アプリケーションを仮想サーバーやDockerコンテナーなどで“モダナイズ”する、あるいはコンテナーベースの新規アプリケーションをハイブリッドクラウドで運用する環境の普及を図るとともに、コンテナー環境のベアメタル展開も進める。パートナーとは特にマネージドサービス化を推進することで、ユーザー企業にとって運用負荷の小さいハイブリッドクラウドのメリットを訴求していく。
「クラウドネイティブなアプリケーション開発」では、Red Hat OpenShiftを中核に、JBossなどのミドルウェア群やアジャイル開発、マイクロサービス、プロセス自動化の要素を“パッケージ”化し、クラウド志向アプリケーションを迅速に開発、展開できる環境を提供するとした。「IT運用管理の自動化」では、Ansible関連ソリューションと、機械学習を用いたITシステムの予防保全技術の活用を進めることで、システム運用管理の“自動化 2.0”というメッセージを打ち出す。
パートナー各社の新たな施策
こうしたレッドハットの施策と協調し、富士通では7月に、国内データセンターでのRed Hat OpenShiftのマネージドサービスを新たに開始する。2019年4~6月期から順次、同社のミドルウェア製品群「InterStage」「Systemwalker」「Symfoware」をRed Hat OpenShiftで利用できるようにする。NECでは、システム構築自動化ソフトウェア「astroll IT Automation」をオープンソースとして公開するとともに、Red Hat Ansibleとの連携を開始し、国内初のサポートサービスを始める。
富士通 プラットフォームソフトウェア事業本部 Linux開発統括本部長の金重憲治氏は、「クラウドを活用した基幹系業務システムの“モダナイズ”需要へ着実に応える」、NEC サービス&プラットフォーム SI事業部 プロジェクトマネージャーの吉田功一氏は、「マルチベンダーの複雑なシステムを構築、運用するべくNEC内部で開発し続けている自動化のノウハウを顧客に提供する」とそれぞれコメントした。
レッドハット 代表取締役社長の望月弘一氏、NEC サービス&プラットフォーム SI事業部 プロジェクトマネージャーの吉田功一氏、富士通 プラットフォームソフトウェア事業本部 Linux開発統括本部長の金重憲治氏、レッドハット 製品統括・事業戦略 担当本部長の岡下浩明氏(左から)
なお、IBMによる買収については、まだ買収が完了していないことから、独立性の確保と事業の継続性に影響しないという従来の説明を変えていない。