インダストリークラウドとは、特定業界向けのソリューションとシステムの統合に特化し、対象とする業界に合わせて、企業の法務や規制対応、セキュリティなどのさまざまな業務を支援するように設計された、高度にカスタマイズされたソリューションを提供するクラウドサービスだ。エネルギー業界におけるインダストリークラウドの役割を理解するには、その使われ方、導入のメリットとデメリット、そしてどのプロバイダーがもっともよく使われているかを知る必要がある。
エネルギー業界ではインダストリークラウドをどう使っているのか
エネルギー業界ではさまざまな用途にインダストリークラウドが使われているが、もっともよく使われているのは、顧客関係管理(CRM)、リアルタイムデータの提供、ソフトウェアのホスティングだ。
そのうちのCRMに関して、インダストリークラウドソフトウェア企業のVlocityでバイスプレジデント兼エネルギー産業・公益事業担当ジェネラルマネージャーを務めるKelly James氏は、「顧客と公益事業会社の関係を新たに定義し直し、変革できる大きなチャンスがある。他社との差別化が図れる働き方の実現、エネルギー業界の変化をどう乗りきるか、あるいや高まる顧客中心主義やイノベーション、デジタル化、高水準な運用の実現などの問題の解決といったさまざまな課題に向き合っていくには、パートナーシップと協力が重要になる」と説明する。
James氏はさらに、「顧客の期待が急速に高まり、破壊的な技術が登場している今、公益事業会社の最高情報責任者(CIO)や最高顧客責任者(CCO)は、『どうすれば業界の破壊的な変化のペースに遅れないようにしながら、顧客の期待を上回れるか』『複数ベンダーの統合や、顧客情報管理システムや課金システムの大きな変更に伴うリスクなしに、顧客体験を変革できないか』『どうすれば使用量の計測から請求までのプロセスの安定性を維持しながら、新たなサービスや製品を提供できるか』といった自問自答を続ける必要がある」と述べている。
こうした問題や、市場の急速な拡大に伴うほかの課題を解決するために、多くのエネルギー会社がインダストリークラウドに関心を向けている。これは、インダストリークラウドはCRMを改善する手段を提供し、デジタル変革戦略の実現を可能にしてくれるからだ。Vlocityによれば、「われわれが知る限りでは、(エネルギー業界では)インダストリークラウドを利用している企業は多くない。多くの企業はオンプレミスソフトウェアを利用している。しかしエネルギー業界のために設計された、現在のための価値を提供し、将来のための柔軟性と拡張性を備えたソリューションを持つことは、持続的な成長、機動性、差別化を可能にし、明るい未来につながる」という。