あらゆるデジタル変革の取り組みは、徹頭徹尾、利害関係者の体験を改善することを念頭に置いて進めなくてはならない。企業の利害関係者とは、従業員、顧客、パートナー、そしてサービスを提供する対象のコミュニティのことだ。MuleSoftの調査レポート「Connectivity Benchmark」によれば、ほとんどの最高情報責任者(CIO)がデジタル変革プロジェクトに関わっているという。
ITに関する意思決定責任者の97%は、新たな技術を組み合わせて、古い業務プロセスを刷新し、新たなビジネスモデルを用いたイノベーションのチャンスを模索し、実現することを求められている。これらのITリーダーは、デジタル変革のプロジェクトをどのように捉えているのか。どんな要因を背景として、プロジェクトへの投資が行われているのか。デジタル変革がビジネスに与える短期的、長期的なメリットはどんなものか。同レポートでは、2020年に向けて、今旬を迎えているトレンドを挙げ、それらのトレンドがビジネスに与える影響について検討している。
調査では、850人以上の世界のITリーダーと9000人の消費者を対象とした調査データや、サードーパーティーの知見を元に、2020年に主流になる7つのトレンドを予想した。また、それぞれのトレンドについて事例を紹介し、世界の一流企業のCIOが、どのようにそれらのトレンドに向けた取り組みを始めているか(あるいはすでに推進しつつあるか)を説明している。
本記事では、このレポート「Top 7 digital transformation trends shaping 2020」(2020年に主流になる7つのデジタル変革トレンド)についてまとめる。
消費者体験を1つにつなげる
IT部門は、消費者に対して(これには顧客、パートナー、従業員、開発者が含まれる)、1つにつながったパーソナライズされた体験を提供し、それを広げていくことを強く求められており、組織はこの問題を解決する必要がある。
消費者体験はデジタル変革の取り組みの中核だと言える。
出典:「Top 7 digital transformation trends shaping 2020」(MuleSoft)
各企業で平均で900種類のアプリケーションが使われていることを考えれば、企業が提供する体験を1つにつなげるのは非常に困難なことだ。一方で、消費者は複数のチャネル(メッセージングサービスやモバイル向けのサービスポータルを含む)を横断的に利用できる、一貫性のある体験を期待している。オムニチャネルの顧客は、単一のチャネルしか使用しない顧客と比べて、オンライン上では10%支出が多いという統計もある。1つにつながった体験を実現するには、カスタマージャーニーの過程に存在する摩擦を取り除き、いつでも、どこからでもアクセスできるようにする必要がある。顧客はまた、高度にパーソナライズされた体験を期待している。消費者の76%は、企業は消費者の期待やニーズを理解すべきだと考えているのだ。
複雑さが増すほど、1つにつながった体験を提供することは難しくなる。
出典:「Top 7 digital transformation trends shaping 2020」(MuleSoft)