IDC Japanは、デジタル変革(DX)に取り組む国内のITユーザー企業で、DXの推進が阻害される要因について分析した結果を発表した。DXに取り組む企業の2割で推進意欲が減退し、主な原因ではデジタルの価値を全員が共有できていないことだと分析している。
同社では、2018年頃から「PoC(Proof of Concept:概念実証)疲れ」や「DXはバズワード」などの言葉が聞かれるようになり、DXに対する負の表現がなされる要因を探るために、今回の調査を実施したという。対象はDXについての決定に関与している課長クラス以上の400人。
その結果、回答企業の2割でDXを推進する意欲が減退していた。DXへの取り組みで困難を伴ったとされるのは、DXの理解や計画のフェーズに集中していた。一方、PoC以降では困難とするケースは大幅に減少していることが分かった。同社が定義するDXの成熟度ステージに関わらずこの傾向は同様で、“PoC疲れ”などの課題は計画時点で目標との不整合が発生しているためだと分析している。
また、DXの取り組みの阻害要因では、「社員のDX理解不足と受容性の不足」を挙げる企業が4割あった。推進する意欲とクロス分析した結果から、DXの価値を全員が共有できていないことが最大の阻害要因だと指摘している。この場合、組織の縦割りの弊害が発生して全社的な協力関係が築けないことが、負の連鎖をもたらしているという。
同社はITを利用する企業に対して、全ての従業員やステークホルダー(利害関係者)がデジタルの価値を共有する企業文化への変革を急ぐべきであり、日本の生産性や国際競争力を高めるためにITサプライヤーは、顧客企業のデジタル文化の浸透に協力して、一緒にデジタルビジネス人材や先端IT人材の育成に注力し、実行面の課題を排除しなければならないと指摘している。
DXの実行に困難を伴った取り組みフェーズ(出典:IDC Japan)