世界的なクラウドインフラ市場におけるAmazon Web Services(AWS)の強さは依然として疑う余地がないものの、ハイブリッドなIT環境に対して企業が熱い視線を送るようになっているなか、競合他社の力がより強まるとともに、急速に成長していることがCanalysの最新のレポートで示されている。
Amazonが所有するクラウドコンピューティングプラットフォームは32.6%の市場シェアを誇っており、競合他社との差は依然として大きい。同社を追いかける立場にある大手2社のシェアは、「Microsoft Azure」を有するMicrosoftが16.9%、「Google Cloud」を有するGoogleは6.9%となっている。
しかし、大事なのはその内容だ。両社の成長スピードに目を向けると、AWSの成長ペースは見劣りしている。
2018年と比べると、AWSは35%成長している。これはMicrosoftの59%をかなり下回っており、同レポートで「フロントランナー」と評されているGoogleの69%と比べるとさらに見劣りする。
CanalysのチーフアナリストであるAlastair Edwards氏は米ZDNetに「AWSは依然として驚異的な成長を続けており、ペースが鈍化しつつある理由には(市場の拡大による)大数の法則も関係している」と語っている。
そのうえで同氏は「しかし最近、Microsoftが同社の地位を極めて強固なものにしたという事実も要因となっている」と続けている。
AWSは10月、米国防総省(DoD)が進める10年間で100億ドル(約1兆1000億円)におよぶ可能性がある「JEDI」(Joint Enterprise Defense Infrastructure)プロジェクトの入札において、Microsoftとの一騎打ちで敗れている。
同プロジェクトにおいてMicrosoftは2029年終盤まで、DoDのレガシーシステムをAzureによる新たなクラウドサービスでアップグレードし、その業務やミッションを支援していくことになるだろう。
MicrosoftとAmazonが最後まで争った同プロジェクトのクラウドプロバイダー選定では、AWSが勝利を手にすると考える向きが多かった。その理由はおそらく、米中央情報局(CIA)がクラウド利用を始めた2013年に、契約相手として選んだクラウドプロバイダーがAWSだったためだ。
それと同時に、CIAとDoDのデータを同じクラウドに格納することは、セキュリティリスクをより高めるとも指摘されていた。
複数のプロバイダーを併用することでリスクの分散を図るという戦略に転換したのは米政府が初めてではない。Canalysによるとこれは、規模の大小にかかわらず企業の間で高まってきているトレンドを反映したものだという。
そして、企業の間でマルチクラウドというソリューションの採用が進むなか、チャネルパートナーの役割がますます脚光を浴びるようになってきている。