クラウドという言葉を聞かない日がない現代において、ソフトウェアベンダーはコードの開発と出荷という業務から、24時間365日を通したデータセンター運用業務へと進化してきた。こういった状況のなか彼らはおそらく、開発と運用を順調に進め、間断なくリリースを行いながら、開発チーム間の恒常的な連携を実現するために、他のどのような業種の組織よりもDevOpsという手法を必要としているはずだ。
Microsoft本社
提供:Microsoft
世界最大のソフトウェア工場と言ってもよいMicrosoftも、同じ理由でDevOpsに対して真剣に取り組んでいる。「Microsoft Azure」のシニアプロダクトマーケティングマネージャーであるOri Zohar氏は最近の同社ブログへの投稿で、DevOps文化を醸成し、完璧なものにすることが同社にとっていかに喫緊の課題であるかを説明している。同氏は「われわれは『Microsoft Office』製品からMicrosoft Azure、そして『Xbox』に至るまでのさまざまな製品を開発するなかで、ソフトウェア調達のための新たな手法に順応する必要性に気付いた」と説明し、「新たなクラウド時代は、よりリッチな、そしてより優れたエクスペリエンスを求めてニーズを増大させる顧客に応えられるイノベーションを生み出すという、途方もなく大きな可能性に向けた扉を開いた。その一方でわれわれの競争は減速する気配を見せていない。イノベーションを加速し、われわれの作業方法を変革する必要性は厳然として存在し、喫緊の課題となっている」と続けた。
MicrosoftにおけるDevOpsの取り組みの多くは、Microsoft One Engineering System(1ES)チームによって統括されている。このチームは、同社のさまざまな製品ラインをまたがるエンジニアリングチームとともに働くおよそ200人のメンバーで構成されている。1ESチームはツールやプロセス、(オープンソースに対する貢献といった)プログラムオフィス、アクセシビリティー、セキュリティとコンプライアンス、社内のコンサルティング、「インナーソース(組織内でのソースコード共有)」、エンジニアリングチーム全体でのベストプラクティスの強化といったことに注力している。
2014年に組織された1ESチームは、同社の「Azure DevOpsイニシアティブ」を統括し、そのなかで築き上げ、身に付けたベストプラクティスを5万人以上におよぶ同社従業員に広めてきている。このチームは、わずか数時間で主要アプリケーションスイートのアップデートをロールアウトできる能力をはじめとする素晴らしい成果を達成している。同社におけるDevOpsアクティビティーの実態を公開した「Driving engineering culture change at Microsoft:An experimental Journey」(Microsoftにおけるエンジニアリング文化の変革を推進する:ある実験的な旅路)のなかで、同チームは以下の成果を報告している。
ソースコードコントロールの問題は減少し、ビルド時間の削減とビルドの信頼性強化が図られ、セキュリティとコンプライアンスの取り組みが標準化され、大半のエンジニアリングチームが同じ方法で作業を管理できるようになった。数千人規模の(社内)ユーザーと数百万におよぶ作業項目、300GBのソースコードを抱える巨大な「Windows」エンジニアリングチームでさえも、40を超える「Source Depot」のサーバーから単一アカウントの下でホストされている単一のGitリポジトリーに移行した。その結果、Microsoft Officeのビルド時間は日単位から時間単位に減少した。