2020年が明けた。朝日インタラクティブが運営する「ZDNet Japan(ZD)」では大企業のIT部門を中心に、「TechRepublic Japan(TR)」では中堅中小企業のIT部門と大企業の非IT部門を中心に、それぞれの読者がITの活用において議論すべき話題を日々提供している。そこで2020年の新春企画として2つの編集部が意見を出し合い、2019年を振り返りつつ、2020年は何を議論すべきなのかをまとめた。参加したのは以下の通り。
ZDNet Japan編集部:國谷武史(編集長)、藤本和彦、大場みのり、海外記事担当(以下、海担)
TechRepublic Japan編集部:田中好伸(編集長、ZD副編集長を兼務)、河部恭紀、藤代格
存在感高まるAlibaba
ZD海担:海外担当のため、決算結果からクラウドの勢力図を取り上げることが定期的にあるものの、AWS(Amazon Web Services)とMicrsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の3強は当面変わらないだろうと予想されています。ただ、ここ数カ月はAWSがトップながらも、一時期に比べて成長が鈍化しているため、今後AWSの牙城を崩すような話も出始めました。
直近では、10月に米国防総省(DoD)が進める10年に及ぶ100億ドル(約1兆1000億円)という規模のクラウドプロジェクト「JEDI」(Joint Enterprise Defense Infrastructure)契約の入札で、予想に反してAWSではなくMicrosoftが受注したことも大きな話題を呼びました(AWSは、政治的な介入があったとして抗議しています)。各クラウドベンダーが戦略を打ち出す話も面白いです。
他方でAlibabaも存在感を示し始めています。中国はデータや5Gにも積極的ですが、インフラにも注力している点はいろいろと考えさせられます。
2019年の対談でもマルチクラウドのトレンドが進むという話が出ていましたが、海外でも同様の意見が多いと思います。2019年はIBMがRed Hatの買収を完了し、2020年はその動きが出てくると考えられます。他にもアプリケーションのポータビリティ向上という文脈でコンテナ化が加速している点やクラウドがオンプレミスに寄ってくるという文脈でもサービスが増えてきたように感じます。機能面に目を向けるとAI(人工知能)やアナリティクスもクラウドで一層充実してくると思います。
話は変わりますけど、2019年は、コンシューマーサービスを通じて数年間で台頭し、世の中の流れを変える破壊的な企業がIPO(株式市場上場)するケースが多くありました。UberとLyftもほぼ同じタイミングで上場しています。技術戦略やインフラ活用という話が明確になり、読者の反響も大きかったです。
ZD國谷:IaaS(Infrastructure as a Service)のトレンドで見ると、IBMとRed Hatという組み合わせができたのは、いろいろなコンテナ技術の活用が背景にあると思います。「インフラに縛られたくない」というユーザーの希望が高まっており、ベアメタル、ハイパーバイザー、OSといった部分にアプリケーションが縛られることで、障害発生時に可用性やサービスを確保できず、影響が大きくなってしまう傾向にあります。
そこで上位レイヤはコンテナやマイクロサービス化によって、開発のスピードを確保しつつ、同時にインフラの影響を受けにくいようにしたいというニーズが高まってきています。8月に国内で大規模な障害も発生したことで、インフラに縛られないアプリケーション環境に対する需要はより大きくなるかもしれません。コンテナを制御する「Kubernetes」が注目されていますし、「Red Hat OpenShift」のように企業向けのKubernetesとDockerコンテナの基盤に魅力を感じてIBMはRed Hatの買収に至ったようです。