2020年最初の「一言もの申す」。折しも連載300回目。今年もどんどん、もの申していきたい。節目となる今回は、「サイバー攻撃を戦争の武器にするな」と訴えたい。
「地政学的な緊張が今世紀最大レベルに達している」
「新年は混乱の中で始まった。われわれは危険な時代に生きている」――。米国とイランの緊張が高まっていることを受け、国連のAntónio Guterres事務総長が報道陣を前にこう語ったそうだ。さらに、「地政学的な緊張が今世紀最大レベルに達している」と警鐘を鳴らした。
米Trump政権がイランの革命防衛隊司令官を隣国イラクの首都バグダッドで殺害したのに対し、イランは米軍のイラク駐留基地にミサイル砲撃を行って報復。双方とも戦争は避けたいことを示唆しているが、不測の事態で軍事衝突を招く危険がある。
中東の戦乱は世界経済に打撃を与える。さらには「第3次世界大戦」の導火線になりかねない危うさがある。そうした中で、新たな武器として浮上してきているのが、サイバー攻撃だ。今回の動きにおいても、イランが米国への報復として大掛かりなサイバー攻撃を仕掛けるのではないか、との見方がある。イランにはそれだけの技術力があるという(関連記事)。
戦時でのサイバー攻撃は、軍事関連のシステムだけでなく、敵国の経済社会、さらには生活そのものに直結するインフラシステムも対象となる。昨今、サイバー攻撃は一段と高度化してきているが、万一今回の動きが戦争になれば、世界を巻き込んでこれまで経験したことのない出来事が起こりかねない。その意味で、サイバー攻撃はフィジカルな攻撃と同等に捉えるべきである。
今回、もしイランが米国に対してサイバー攻撃を行えば、米国も応酬するだろう。それがエスカレートすれば、関係国も参戦する可能性が大いにある。なぜならば、どこが攻撃しているか、分かりづらいところがあるからだ。それもあって“武器”にしやすい面もあるのだろうが、ここは何とかサイバー攻撃を戦争の武器にしない、させないようにしたいものである。