Armは米国時間4月29日、立ち上げの初期段階にある新興企業を対象に、世の中で広く利用されているArmチップの設計にまつわる一部のIPに無償でアクセスできるようにするプログラム「Arm Flexible Access for Startups」の立ち上げを発表した。その目的は、IoTや自動車関連、エッジでの人工知能(AI)活用といった分野でのイノベーションの加速にある。このプログラムは既存の「Arm Flexible Access」プログラムに基づいたものだが、利用する上での敷居が低くなっている。Flexible Accessはどちらかというと既に資金を確保している新興企業を対象にしている。
Flexible Access for Startupsは確保している資金が500万ドル(約5億3400万円)以下の新興企業を対象にしている。このプログラムを利用することで、ArmのIPポートフォリオだけでなく、同社の抱える半導体設計者やソフトウェア開発者、サポート、訓練、ツールのエコシステムにアクセスできるようにもなる。
Armで自動車およびIoT分野におけるビジネス変革の責任者を務めるPhil Burr氏は米ZDNetに対して、「新興企業は無償でIPのポートフォリオにアクセスできるようになった。これにより、権利関係の料金を一切支払うことなく、実験や、プロトタイプの開発/設計/製造、顧客を交えた市場でのテストが可能になった」と述べ、「当社がこのようなプログラムを実施するのは、新興企業のイノベーションを支えたいからだ。多くの新興企業は自社のポートフォリオ全体をArmに基づいたものにしており、大きな成功を収めている」とした。
Flexible AccessとFlexible Access for Startupsの両プログラムは、「Arm Cortex-A」と「Arm Cortex-R」「Arm Cortex-M」の各プロセッサファミリーのほか、一部の「Arm Mali」GPUやイメージ信号プロセッサー(ISP)、その他のシステムオンチップ(SoC)ビルディングブロックのIPを含む、70を超えるArm製品へのアクセスを提供している。
Flexible Accessプログラムが開始された2019年よりも前には、ArmのIPを使用したいと考えるすべての企業は事前にライセンス料を支払わなければならなかった。Flexible Accessの登場によって、企業は少額の年間利用料金のみを最初に支払えばこれらの製品にアクセスできるようになった。なお、Flexible Accessプログラムに参加している企業は、現時点で40社を超えるまでになっている。
Flexible Access for Startupsの場合、企業は自社の製品が商用生産に移行するまで一切の料金を支払う必要がない。これにより、新興企業は実験に向けた大きな自由度を手にできるようになる。
Armによると、この新プログラムによって、新興企業はリスクを低減させるとともに、TTM(Time to Market)を6〜12カ月短縮できるようになる。
Armはこの取り組みの可能性を示すために、シリコン分野の新興企業についてSemico Researchに調査を依頼した。調査結果によると、シリコン分野の新興企業は過去5年間で13億ドル(約1400億円)を超える資金を得ているという。この金額は2016年から2019年に10倍に増えている。また、過去5年間に創業された新興企業のうち、自動車関連を対象としている企業は3分の1以上であり、IoTアプリケーションを対象としている企業も3分の1を占めているという。
またArmは、Arm Flexible Access for Startups導入の一環として、半導体関連ソリューションを加速させる新興企業の支援を目的としたインキュベーターであるSilicon Catalystと提携すると発表した。この提携により、Silicon CatalystのメンバーもArmのIPやその他のリソースに無償でアクセスできるようになる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。