本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏と、セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャーの秋津望歩氏の発言を紹介する。
「攻めのシステム投資にコロナの影響は今のところない」
(テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏)
テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏
テラスカイは先頃、事業戦略に関する記者説明会をオンライン形式で開いた。佐藤氏の冒頭の発言はその会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って顧客のシステムへの投資動向に変化が出てきているかと問われて答えたものである。「攻めのシステム」については、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって新たなビジネスモデルを推進する「SoE(System of Engagement)」領域のことを指すとしている。
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは佐藤氏の冒頭の発言に注目したい。
まずは、攻めのシステムに直結するDXに対しての同社の取り組みを紹介しておこう。同社ではDXを「ITを活用してこれまでの仕事のやり方を変え、イノベーションを起こしていくこと」と捉えており、クラウドソリューションをベースに顧客のDXの取り組みを支援している。
その考え方として、同社は「DX Ready」と呼ぶ指針を打ち出している。具体的には図に示すように、DXに向けて「システムをSoR(System of Record)とSoEに分けて考える」「リフト&シフトでまずはクラウドに上げる」「マイクロサービス化してサービスをモジュール単位で構成する」といった3つのアプローチを行うものだ。
DX Readyの内容(出典:テラスカイの資料)
それぞれの企業のシステムがどうなっているかでアプローチの仕方は違ってくるが、一般的には図の左から取り組んでいく形になる。SoRとSoEにおいてはSoEだけをDXの対象とする捉え方もあるが、テラスカイはDX ReadyによってSoRのリフト&シフト、そしてマイクロサービス化の支援を明示している。この点が同社のDX Readyのポイントである。ただし、冒頭の発言にある攻めのシステムはSoE領域について述べている。これに対し、SoRは「守りのシステム」と捉えている。
会見でコロナの影響を問われた佐藤氏は次のように語った。
「今のところ、本業でコロナの影響を大きく受けている産業を除いて、大半のお客さまのシステム開発投資に向けた意欲が鈍化しているとは見ていない。特に攻めのシステムであるSoE領域については、引き続き積極的に取り組む姿勢のお客さまがほとんどだ。ただ、コロナの影響が長引けば、慎重な姿勢に転じる可能性はある。とはいえ、大手のお客さまの多くは財務基盤もしっかりしているので、アフターコロナを見越してDXによってスタートダッシュを図りたいと考えておられるようだ」
日本の大手企業の多くは、アフターコロナに向けて虎視眈々(たんたん)と身構えてスタートダッシュの準備をしているということか。佐藤氏の見方も踏まえて、今後の動向に注目していきたい。