内山悟志「デジタルジャーニーの歩き方」

ウィズコロナに求められるDX施策--ニューノーマルの時代を見据えて

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2020-06-17 06:00

 前回は、アフターコロナとアフターデジタルの世界観を見据えた企業の対応について述べました。今回は、ウィズコロナと呼ばれるこれから半年、一年で推進すべきDX(デジタル変革)施策について考察します。

新型コロナウイルスの感染対策は、IT戦略遂行の加速要因に

 ITRでは新型コロナウイルスの感染拡大が、企業のIT戦略にどのような影響をもたらすかについて調査を行いました。この調査は、ITRが2020年4月24〜27日にかけて実施したもので、ITRの独自パネルメンバーのうち、国内企業のIT戦略・IT投資の意思決定に関与する担当者に対してウェブ経由で回答を呼びかけ、1370人から有効な回答を得ました。その結果を踏まえて、緊急事態宣言下(アンダーコロナ)、緊急事態宣言解除直後(ウィズコロナ)、新型コロナウイルス終息後(アフターコロナ)の企業におけるITおよびDX戦略施策について考えてみましょう。

 政府の4月7日の緊急事態宣言発令に伴う経済活動の自粛による、自社のIT戦略の遂行(デジタル化の進展)への影響について、企業のIT戦略は「大いに加速すると思う」が27%、「やや加速すると思う」が44%となり、合計で71%が加速する要因になると回答しました。これは、世界規模の大流行が企業に及ぼした影響が非常に大きく、企業活動のさまざまな分野で業務の停滞やビジネス上の問題を引き起こしたことに対して、ITやデジタル技術の活用を進展させることによって、何らかの問題解決やリスク回避のための施策を実行することが期待されているためと考えられます。すなわち、新型コロナウイルスによって企業活動におけるITの重要性が改めて確認されたといえます(図1)。

緊急に実施した対策は「テレワーク制度の導入」が最多

 また、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急に実施した対策としては、「テレワーク制度の導入」に取り組んだ企業が最も多く、37%が緊急措置として導入を完了したと回答しました。次いで「リモートアクセス環境の新規・追加導入」「コミュニケーション・ツールの新規・追加導入」の順で続き、従業員のテレワークに対応するためのITインフラ整備が先行して実施されたことが見て取れます(図2)。つまり、緊急事態宣言によるテレワークや出社制限に対応して、まずは多くの従業員が何らかの形で連絡が取れ、自宅でも何らかの業務が遂行できる最低限の環境を急いで整えたという企業が多いことを示しています。

今後の焦点は文書の電子化対象の拡大

 一方、今後の計画については、短期的(3カ月以内)には「PC、モバイルデバイスの追加購入・追加支給」と「ネットワーク・インフラの増強」を挙げた企業が多く、テレワークを実施したものの、PCなどの機器が行き渡らなかったり、ネットワークの性能が十分でなかったりしたことが明らかとなり、快適なテレワーク環境を提供するためには、これらを増強する必要があることが明らかとなったといえます。また中長期的(3カ月以上先)には「社内文書(申請書など)の電子化対象拡大」「社外取引文書(契約書など)の電子化対象拡大」といった文書の電子化に関わる項目が上位となりました。テレワークに取り組んだことによって文書の取り扱いにまつわる非効率な業務が可視化され、その対策に取り組む企業が増加すると予想されます(図3)。

 今後3カ月から1年程度、われわれはウィズコロナを前提に「新しい日常」を築き上げていかなければならないと言われていますが、それは企業においても同様です。従って、次の課題として、テレワーク環境の充実に加えて、社内業務プロセスおよび社外との取引業務をデジタル化することで、在宅勤務でも通常業務を円滑かつ快適に遂行できる環境を提供することが重要と考えているとみられます。

 また、「2020年内に実施を予定」および「時期は未定だが実施予定」という回答において、「社内文書(申請書など)の電子化対象拡大」「社外取引文書(契約書など)の電子化対象拡大」に次いで「基幹系システムのクラウド化」が多く挙げられていることにも注目されます。これは、少し先のアフターコロナの見据えた施策として、企業における「新しい日常」の業務基盤としてクラウドが期待されていることを意味します。

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