NECとオーストリアに拠点を置く量子コンピューター分野のベンチャー企業Parity Quantum Computing(PQC)は、量子コンピューターを実現する方式の1つ「量子アニーリング」の分野で協業を開始した。
この協業では、NECが2023年の実用化を目指して開発中の超電導パラメトロン素子を用いた量子アニーリングマシンに、PQCの量子ビット間結合技術「ParityQCアーキテクチャー」を実装する。これにより、金融ポートフォリオの最適化や製造業における生産計画立案など、大規模な組み合わせ最適化問題に対応できる実用的な量子アニーリングマシンの実現を目指す。
ParityQCアーキテクチャーをNECの超電導パラメトロン素子へ実装するイメージ(出典:NEC、PQC)
超電導パラメトロン素子は、超伝導のコイルとコンデンサで構成される共振回路で、回路を共振周波数の2倍の周波数で変調することで、0またはπの位相を持つ2つの自励発振状態の1つになる。これらの発振状態の重ね合わせを量子ビットとして使用することができる。
NECは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として、超電導パラメトロン素子を用いた量子アニーリングマシンの開発に取り組んでいる。2023年までに実用的な量子アニーリングマシンの実現を目指しており、全結合状態の量子ビットの集積度向上を進めている。NECは、PQCとの協業の成果をNEDOの委託事業に活用することで、量子コンピューターの開発を加速させていく。
NECが開発中の量子アニーリングマシン(出典:NEC、PQC)