アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)は3月22日、金融分野における同社クラウドの導入事例に関する記者会見をオンラインで開催した。同社のクラウド基盤上に構築されたマネーフォワードの「マネーフォワードFintechプラットフォーム」を横浜銀行が法人・個人事業主向けポータルサイト「<はまぎん>ビジネスコネクト」と連携させた事例について解説した。
まず、AWSの金融ビジネス戦略である「Vision 2025」について説明したアマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 金融事業統括本部 統括本部長の鶴田規久氏は、金融機関を取り巻く事業環境が大きくかつ急速に変化しつつある中、金融機関には「Business Model Reinvention」「Engagement in New Normal」「Resiliency for the Future」の3つの変化が求められると語った。Vision 2025では、この3つの変化を実現しようとする金融機関を支援することになる。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 金融事業統括本部 統括本部長 鶴田規久氏
具体的には、Business Model Reinventionに対して「データを活用した新しい価値の創造/外部との連携を可能とするプラットフォーム」を、Engagement in New Normalに対して「デジタルチャネルのメイン化を加速/パーソナライゼーションによる顧客深耕」を、Resiliency for the Futureに対して「高い可用性やセキュリティの確保/急激な変化に対する伸縮性の提供」を、それぞれ支援していくという。
同氏は2011年に東京リージョンを開設してからの国内事業を振り返り、2011年からの「第1ステージ」は「ノンクリティカルシステムのための低コストインフラ」、2017年からの「第2ステージ」は「金融ITを効率化するインフラプロバイダー」だったとした上で、2021年からの「第3ステージ」では「金融ビジネスを変革するパートナー」となることを目指すとした。
続いて、マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードエックスカンパニー COO(最高執行責任者)の神田潤一氏が同社の概要とマネーフォワードFintechプラットフォームについて説明した。
マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードエックスカンパニー COO 神田潤一氏
同氏はマネーフォワードFintechプラットフォームについて「『顧客向けWEBサービス・アプリ提供』から『データ収集』『データ分析』までをワンストップで導入できるプラットフォーム」だと説明。2600以上のサービスと連携可能な「アカウントアグリゲーション基盤」で収集した資産データや決算データをデータ分析基盤で分析/活用することで「ライフイベント検知」「趣味嗜好分析」「融資モデル」などの高度なサービスを実現することが可能になるという。
なお、同社がプラットフォームとしてAWSを利用する理由としては、「豊富なマネージドサービス(特にデータアナリティクスと機械学習)」「金融機関のAWS基盤とのセキュアなデータ連係(AWS PrivateLink)」「マネーフォワードサービスでの実績およびSaaSに対する手厚い支援体制」の3点を挙げた。
最後に、横浜銀行 執行役員 デジタル戦略部長の田坂勇介氏が同行のデジタル戦略やマネーフォワードFintechプラットフォームとの連携について説明した。同氏は「社会構造が大きく変化している現在は、地域金融機関の在り方そのものが問われている」との認識を示した上で、「この変化に柔軟に対応し、お客さまにより快適なサービスをご利用いただくため、デジタル技術を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めています。そして、従来の銀行を超える新しい金融企業への進化を目指しています」と語った。その上で、目指す姿を実現するための“デジタル戦略”の全体像を紹介した。
横浜銀行 執行役員 デジタル戦略部長 田坂勇介氏
同社のデジタル戦略は、大きく「業務のDX」と「ビジネスモデルのDX」の2つの軸で推進されているという。そして、業務のDXでの取り組みである「業務付加価値の向上」として、「統合型デジタルマーケティングの実践」に取り組んでいる。この取り組みでは、機械学習による見込み客リストの生成などで具体的な成果を挙げているという。
また、ビジネスモデルのDXでの取り組みである「顧客体験の革新」では、「CX(カスタマーエクスペリエンス)向上」に取り組んでいる。こちらではカスタマージャーニーをライフイベントごとに策定、提案するなどの形で顧客体験の向上を目指している。
これらの取り組みに活用するツールとして2020年1月に開始されたのが法人・個人事業主向けポータルサイトの<はまぎん>ビジネスコネクトだ。
NTTデータ、マネーフォワード、横浜銀行の共同開発で、今回はさらにマネーフォワードFintechプラットフォームとの連携を行うことで機能強化を図っている。<はまぎん>ビジネスコネクトは、現在は約6000社が利用しているが、今後5万社程度までの拡大を見込んでおり、「法人のメインチャネルへの飛躍を目指している」という。
マネーフォワードFintechプラットフォームとの連携によって、マネーフォワードのアカウントアグリゲーション技術を活用し、他行口座情報の連携によってユーザーの資金管理の一元化を実現する。また、自行講座情報と他行口座情報を連携・蓄積することで既存のインターネットバンキングサービスの明細保有期間を超える入出金明細の保有が可能になることから、「これを利用して、<はまぎん>ビジネスコネクト上でデジタル通帳の提供を実現していく」という。
今後の構想としては、「分析基盤の構築」と「トランザクションレンディングへの活用」の2点が紹介された。