筆者は10年前、「Chromebook」が「Windows」搭載PCキラーになるだろうという記事を執筆したが、実際にはその通りにならなかった。しかし、予想はさほど大きく外れていない。Microsoftは今日、「クラウドPC」という考え方によって、WindowsをスタンドアロンPC向けOSからクラウドベースの「サービスとしてのデスクトップ」(DaaS)へと変えるべく注力している。このアイデアを最初に考え出したのは誰だろうか。ユーザーがクラウドベースのデスクトップを受け入れると最初に証明してみせたのは誰だろうか。その答えは、「Chrome OS」を作り上げたGoogleにほかならない。
筆者は当時、Chromebookが5つの理由で市場の勝者になると考えていた。中でも最大の理由は、ChromebookがWindows搭載PCよりもずっと安価に入手できるというものだった。この点において筆者の主張は的を射ていた。今では職場や家庭での利用に適した、そして学生向けとして、安価で素晴らしいChromebookが数多く出回っている。
その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがわれわれを襲った。そしてリモートワークやリモートラーニングが世の中に急速に浸透していく中、Chromebookの売り上げに火がついたのだった。それ以来、ChromebookはSpaceXの「Falcon 9」ロケットのような加速を見せてきている。Chromebookに対する需要は、DellやHP、Lenovoといった大手PCメーカーすべてで大きく伸びた。実際、調査会社Canalysによると、Chromebookの2021年第1四半期の出荷台数は前年同期比275%増になったという。つまり、筆者が考えていたよりも時間がかかっていただけで、Chromebookは結局のところメインストリームになったのだ。
また筆者は、Chromebookの使いやすさも普及の鍵になると考えていた。この主張は今日でも有効だ。ウェブブラウザーを使えるのであれば、Chromebookも使いこなせる。使用方法はそれくらいシンプルだ。そして、Chromebookは究極の携帯用コンピューターでもある。
データが消えて無くなってしまうことはない。これも筆者がChromebookを愛してやまない理由の1つだ。Windowsを利用していて重要なデータを無くしてしまったという経験は誰にでも1度や2度あるはずだ。Chromebookであれば、ブルドーザーに押しつぶされたり、バルセロナでタクシー内に置き忘れてそれっきりになったり、息子が学校用のChromebookにピーナツバターとジャムのサンドイッチをぶちまけたとしても何の問題もない。Chromebookをもう1台入手してログインするだけで、すべてのファイルとデータは復活する。プライバシーの問題は確かにあるだろうが、セキュアなLinuxデスクトップではそういった問題は数少ない。どちらかというとそれはモダンなPCの問題だ。