アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は9月6日、記者説明会を開き、クラウド利用時のコスト削減の支援策を解説するとともに、NTTドコモがこれを活用した削減事例を紹介した。
今回AWSジャパンが解説した支援策は、「Cloud Financial Management」(CFM)と「Financial Hackathon」(FinHack)の2つ。いずれも海外で先行提供し、日本では2020年4月に開始した。同時期に国内独自施策として開始した「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ」(ITXパッケージ)にも組み込まれ、コスト削減の観点では「AWS コスト最適化フレームワーク」として構成されている。
「AWS コスト最適化フレームワーク」の概要
施策の背景について事業開発統括本部長の佐藤有紀子氏は、顧客がAWSのサービスの利用開始後に、期待したほどコスト削減効果を得られないケースがあると説明。要因には、オンプレミスのシステム利用時と同じような感覚でクラウドを利用してしまうことや、顧客組織内で部門横断的にクラウドを最適利用する意識やノウハウなどが共有されていないことがあるという。
このためコスト削減支援策としては、ITXパッケージにある「Cloud Economics」でまずはAWSへの移行による全体的な効果を試算し、CFMにおいてより具体的な事前評価とそれに基づく施策を検討する。利用開始後は、FinHackで課題を洗い出し、よりコスト効果の高いサービスの活用や人材、組織体制の在り方などをワークショップで検討し、実践していく。
説明会では、2020年度にFinHackを2回実施したというNTTドコモ ネットワーク本部 サービスデザイン部長の伊藤孝史氏が5つのコスト削減事例を紹介した。同社はスマートライフ事業領域を中心に、200種類以上のサービスをAWSのIaaSなどで稼働させているとし、AWSアカウント数も2016年以降の5年間で5倍に増えるなど、利用規模の拡大に伴うコストの上昇が課題であるという。
NTTドコモでのAWSのリソース利用状況
伊藤氏は、「基本的に従量課金で利用しており、サービスの種類が豊富ですぐに使い始められるなど利便性が高い一方、さまざまなメンバーが利用する中で、コスト意識を共有するのが難しかった。クラウド利用を促進するCoE(Center of Excellence)の活動と並行してFinHackを行ってきた」と話す。
まずインフラ領域では、オンプレミスの感覚で設計、構築、運用していたという環境を最適化し、検証環境では金額を60%削減した。商用環境ではサーバー台数を17%削減した。例えば、CFMにより検証環境の各種サービスの利用状況を分析、可視化して、EC2がコストの45%を占めているなどの事実が判明し、インスタンスのスペックを必要最小限にしたり、デバッグ利用の無い夜間や休日の稼働を停止したりするなどの措置を講じたという。
コスト削減の一例
コンテナーのAmazon Elastic Container Service(ECS)のコスト削減では、トラフィックに合わせたスケジューリングとオートスケーリング機能によって37%、料金プランのSavingsPlansの適用で17%、合計48%削減した。また、ECSでオートスケールしていないタスク数の削減やCPU使用率の低いタスクでの割り当てリソースの見直しで、コストを55%削減した。
コスト削減の一例
データのETL(抽出、変換、ロード)では、最新世代のAWS Glue 2.0への移行で27%、Amazon CloudWatchではログ保存のルールや方法などの見直しにより35%削減した。利用開始当初は常時起動させていた商用維持環境についても、利用部門との調整で不要なサービスなどを夜間や休日に停止することにより35%削減したという。
コスト削減の一例
伊藤氏によれば、こうした取り組みと効果を継続させるべく、チェック項目などを用意して利用者間で常に確認を図ったり、定期的にミーティングを行ったりして、意識やノウハウなどを共有している。「ハッカソンも録画し、参加できなかった利用者が後で視聴したり、見直したりして、効果を持続させることに努めている」(同氏)と紹介した。