本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、Ridgelinez CEOの今井俊哉氏と、セールスフォース・ドットコム Tableauカントリーマネージャーの佐藤豊氏の発言を紹介する。
「『人起点』の企業変革を実現するためには“4つのX”が必要だ」
(Ridgelinez CEOの今井俊哉氏)
Ridgelinez CEOの今井俊哉氏
Ridgelinez(リッジラインズ)は先頃、プライベートイベント「TRANSFORMATION SUMMIT 2021」をオンラインで開催した。今井氏の冒頭の発言はそのオープニングスピーチで、企業変革を実現するための要件について述べたものである。
Ridgelinezは富士通グループでDX(デジタルトランスフォーメーション)のコンサルティングを手掛ける専門会社として2020年4月に始動。今回のイベントは同年8月に開催したものに続いて第2弾となる。
今回は「変革の谷を超える」をテーマに、今井氏は同社としてまず次のようなメッセージを発信した。
「なぜ、企業は変われないのか? 突破口となるのは『人起点』の発想。パーパス、事業、組織・人の3つの変革を『人起点』にシフトすることで、持続的に進化する未来を創る。その変革シフトを加速させるのは、ストラテジー、デザイン、テクノロジーの融合である。最先端の知見を、すべてのチェンジリーダーたちへ」
この内容は同社のPRでもあるが、この中で今回、同社が最も訴求したい言葉を強調しているので取り上げた。二度使っており、なおかつ冒頭の発言にもあるのでお分かりの通り、「人起点」という言葉である。
では、冒頭の発言にある「4つの“X”」とはどういうことか。今井氏は次のように説明した。
「私たちはこれまでDXによる企業変革として、顧客のエンゲージメントを高めるCX(カスタマーエクスペリエンス)、そして洗練された業務遂行を目指すOX(オペレーションエクセレンス)を追求してきた。しかし、CXやOXだけでは組織や人が変わるのは難しい。組織や人が変わるには『人起点』で、従業員のエンゲージメントを高めるEX(エンプロイーエクスペリエンス)、そして洗練されたマネジメントに向けたMX(マネジメントエクセレンス)が求められる。すなわち、企業変革を実現するためにはこれら“4つのX”が必要というのが、今の私たちの考え方だ」
さらに今井氏は、「4つのX」を同時並行で実現するための経営のリーダーシップも非常に重要になると強調した(図1)。
図1:企業変革に必要な「4つのX」とリーダーシップ(出典:Ridgelinez)
同氏はまた、そうした活動を支えるテクノロジーが担う役割として、AI(人工知能)やデータマネジネントが「価値を創る」、リスクマネジメントやセキュリティが「安心を創る」、クラウドやアジャイル開発が「アジリティーを創る」と説いた(図2)。
図2:企業変革へテクノロジーが担う役割(出典:Ridgelinez)
DXコンサルタントらしい話だったが、筆者の見立てでは、特に「4つのX」を描いた図1については、今井氏はさらに進化させるつもりではないか。Ridgelinezの「DXによる企業変革」を描いた「1枚の図」がどんなものになるか。注目したい。