本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、Lenovo 会長 兼 CEOのYuanqing Yang氏と、Snowflake カントリーマネージャーの東條英俊氏の発言を紹介する。
「今後は全てのビジネスがデジタルになり、全ての製品はas a Serviceとして提供される」
(Lenovo 会長 兼 CEOのYuanqing Yang氏)
Lenovo 会長 兼 CEOのYuanqing Yang氏
Lenovoは9月8日、年次イベント「Lenovo Tech World 2021」をオンラインで開催した。同社の会長 兼 CEO(最高経営責任者)であるYuanqing Yang(ヤンチン・ヤン)氏の冒頭の発言は、その基調講演のスピーチで、今後のデジタル社会の在りようについて語ったものである。
LenovoというとPCをはじめとしたデバイスのベンダーとのイメージが強いが、2014年10月にIBMのx86サーバー事業を買収して、エンタープライズ向けのデータセンター支援事業に本格的に乗り出した。全体の売上規模の構成比でいえば、同事業はまだ1割余りといったところだが、順調に伸びており、Yang氏はまだまだ高い成長を見込んでいるようだ。
それを象徴するように、同氏の今回のスピーチでも「ハイブリッドクラウドソリューションにおけるエッジ領域の強化」や「AI(人工知能)プラットフォームの普及拡大」、「全ての製品をas a Serviceとして提供」といった最新のエンタープライズ向けの取り組みについての説明に力が入っていた。
また、基調講演ではYang氏がゲストを迎え入れる形で、Microsoft 会長 兼 CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏、SAP CEOのChristian Klein(クリスチャン・クライン)氏、VMware CEOのRaghu Raghuram(ラグー・ラグハム)氏、Nutanix CEOのRajiv Ramaswami(ラジブ・ラマスワミ)氏、Intel CEOのPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏などが登壇。それぞれにLenovoとの緊密なパートナーシップを強調した(写真1)。
写真1:「Lenovo Tech World 2021」の基調講演でYang氏と語り合うMicrosoft 会長 兼 CEOのSatya Nadella氏
Yang氏のスピーチの内容についてはレノボ・ジャパンの発表資料をご覧いただくとして、ここではYang氏の冒頭の発言に注目したい。「全てのビジネスがデジタルになる」というのは、一言でいうと「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を指している。従って発言の意図としては、DXと「全ての製品のas a Service化」は一体化した動きとも読み取れる。
Lenovoは2019年からas a Serviceモデルとして「Lenovo TruScale」というブランドを立ち上げ、これまではサーバーなどのインフラ製品を対象に適用してきたが、今回これを全ての製品に広げてサービス提供することをスピーチの中で明らかにした。そして、同氏はこの取り組みを「Everything as a Service」と表現していた。
Yang氏の冒頭の発言は、まさしく「これからの時代を投影した明言」といえるだろう。ただ、Lenovoにとってビジネスモデルが似た強敵であるDell TechnologiesやHewlett Packard Enterprise(HPE)は、既に全ての製品のas a Service化を進めており、ようやく追いついたという印象は否めない。一方で、データセンター支援事業分野の「グローバル御三家」がas a Serviceモデルでも出揃ったとの見方もできよう。Dell、HPEを追撃できるか。Lenovoの攻勢に注目していきたい。