松岡功の「今週の明言」

NEC社長が語った「新型コロナの影響と今後のビジネス動向」とは

松岡功

2021-08-13 11:21

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏と、日本オラクル 理事クラウド・アプリケーション事業統括CXクラウド事業本部 本部長の桑野祐一郎氏の発言を紹介する。

「新型コロナの影響で商談がストップしていた状態は解消されつつある」
(NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏)

NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏
NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏

 NECは先頃、2021年度(2022年3月期)第1四半期(2021年4〜6月)の決算を発表した。森田氏の冒頭の発言はオンラインで開いたその発表会見の質疑応答で、新型コロナウイルスの感染拡大によるビジネスへの影響を問われて答えたものである。

 NECの同四半期の連結業績は、売上収益(売上高に相当)が前年同期比10.9%増の6519億円、営業利益が前年同期から163億円増の105億円と、増収増益だった。森田氏はこの業績について、「業種によって違いはあるものの、全体の市況としては回復傾向にある」との見方を示し、質疑応答で新型コロナのビジネスへの影響を問われると、冒頭のように答えて一部の業種を除いて商談が動き出していることを明らかにした。

 そうした今後の市場動向を探るために、筆者が特に注目したのが受注動向だ。表1がNECの各事業分野における四半期ごとの受注高の推移を示したものである。今回発表の四半期の数値は一番右側に記されており、その全体を見ると前年同期比2%減となっている。ただ、これについて森田氏は「大型案件の有無で変動が大きい海洋分野と、今回非連結分野となったディスプレイを除くと、前年同期比9%増になる」と、要するに受注も好調であることを示した。

表1:各事業分野における四半期ごとの受注高の推移(出典:NEC)
表1:各事業分野における四半期ごとの受注高の推移(出典:NEC)

 表1の各事業分野で好調ぶりが目立つのが、エンタープライズ分野の前年同期比17%増と、ネットワークサービス分野の同19%増だ。それぞれ好調の要因は、エンタープライズでは「企業のシステム投資が回復基調」、ネットワークサービスでは「5G(第5世代移動通信システム)基地局が拡大」が最大のポイントとのことだ。

 では、業種別ではどうか。森田氏は次のような見方を示した。

 「最も好調なのは金融分野だ。流通分野もコンビニエンスストアを中心に回復傾向が顕著になってきた。製造分野についてはゆっくりと回復基調にあり、現時点で前年度並みになってきており、私の感触ではフラットな状況から再び悪化することはないと見ている。さらに、中央官庁の需要も堅調に推移している」

 ただ、続けてこうも述べた。

 「一方で、新型コロナの影響が大きい運輸などの分野は厳しい状況が続いている。また、地方や中小企業という観点でも新型コロナの影響は深刻だ」

 その上で、森田氏は「当社は全事業分野でビジネスを行っていることから、それぞれの事業の割合や状況を見極めながら、全体のビジネスとしてしっかりとマネジメントしていきたい」と語った。当たり前の話ではあるが、実際はそれがなかなか難しいのだろう。同氏の経営手腕に注目していきたい。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    警察把握分だけで年間4000件発生、IPA10大脅威の常連「標的型攻撃」を正しく知る用語集

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    「2024年版脅威ハンティングレポート」より—アジアでサイバー攻撃の標的になりやすい業界とは?

  4. ビジネスアプリケーション

    Microsoft 365で全てを完結しない選択、サイボウズが提示するGaroonとの連携による効果

  5. セキュリティ

    生成AIを利用した標的型攻撃とはどのようなものなのか?実態を明らかにして効果的な対策を考える

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]