クラウドが登場した頃は、ハードウェアやソフトウェアへの先行投資を抑え、コスト削減という価値を企業にもたらすというメリットが大きく取り上げられていた。しかしふたを開けてみると、クラウドサービスに多くのコストが費やされ、無駄になっているという実態さえ見えてくる。これが、クラウドへの投資を追跡した2つの調査レポートに記されている要点だ。
写真:Joe McKendrick
一方の調査レポートの見積もりによると、企業全体を見た場合、クラウドに対する無駄な、あるいは不適切な投資は年間240億ドル(約2兆6700億円)に上っているという。S&P Global Market Intelligenceの一部門である451 Researchの「Market Monitor」サービスは、2021年における世界のIaaS市場を480億ドル(約5兆3500億円)と算出している。この調査では回答者の3分の1以上に相当する36%が、最も高価な選択肢であるオンデマンド契約でしかクラウドを使用していないと答えている。この調査の著者らは「われわれの『Cloud Price Index』(クラウド価格指数)によると、仮想マシン(VM)とストレージ、ネットワークで構成されるシンプルなアプリケーションの場合、確約利用割引を適用すれば、ハイパースケールプロバイダー5社の平均で36%の節約が可能であると示されているため、これはとても残念なことだ」と記している。
またVirtanaがIT部門の意思決定者350人に対して実施した最近の調査では、統一性のないポイントツールや、サイロ化、可視性の欠如、予期せぬコスト、プログラム上の最適化の欠如といった問題が指摘されている。この調査の著者らは、パブリッククラウド上でワークロードを実行している組織の大多数(82%)で、クラウドによる「不必要な」コストが発生していたと記している。
クラウドの価値を最大化する上で最も大きな障壁として挙げられているのは、非効率的なクラウド運用だ。例えば、自社のチームがサイロ内で作業していると答えたのは全回答者の68%に上っており、コラボレーション時の制約が迅速な対応と業務成果の向上を妨げていると答えたのは70%に上っている。
クラウドについてまわる予期せぬ驚きには以下のものが含まれる。
- あらかじめ定められた容量を超える、ワークロードの瞬発的拡大:41%
- コンピュート/ストレージリソースのオーバープロビジョニング:35%
- コンピュートインスタンスにアタッチされなくなったストレージブロック:34%
- 貧弱なジョブスケジューリング:22%
- リザーブドインスタンスの過剰購入、あるいは未使用状態での放置:18%
この調査はハイブリッド/マルチクラウド環境の可視性が欠如していることも示している。複数のパブリッククラウドでワークロードを実行しているとした回答者は84%であるものの、クラウドの全体的なコストを数分以内に把握できず、遅延やアジリティーの低下を招く可能性があるとした回答者は86%となっている。また、ハイブリッド環境全体の可視性に制約があるため、価値を最大化する能力が妨げられるとともに、効率が低下し時間が無駄になっているとした回答者は71%となっている。
さらに、業務が必要とするサービスレベルを提供できているかどうか判断するのは難しいとした回答者は66%であり、問題が発生した場合に業務への影響を洗い出すのが難しいとした回答者は65%となっている。これに加えて、クラウドチームに対するプレッシャーが増加する一因として、パフォーマンス関連の課題の増加を挙げた回答者は77%に達している。