IT関係のあらゆるものは、いずれクラウドに吸収されると考える人がいても不思議はない。クラウドへの移行に対するプレッシャーは高い。IDGが最近実施した、ITに関する意思決定に責任を負っている企業役員550人を対象とした調査によれば、回答者の3分の1以上(38%)が、所属企業のIT部門はすべてのアプリケーションとインフラをクラウドに移行すべきだという圧力を受けているという。
ただし現時点では、企業のIT資産やデータ資産の多くは、各企業のデータセンターに置かれている。これは単純に、現時点ではクラウドには適していないアプリケーションやシステムが存在するからだ。そして将来も、これらの資産がクラウドに移行されることはないかもしれない。IT部門の責任者が、クラウドへの移行は合理的ではなく、オンプレミスに残した方がいいと判断するのはどんな場合なのだろうか。IDGの別の調査によれば、IT部門の責任者の56%はオンプレミスのシステムを当面維持すると答えており、少なくとも40%はミッションクリティカルなレガシーシステムへの依存が大きすぎてクラウドには移行できないと回答している。
クラウドに移行せず、オンプレミスに残す方が合理的なのはどんな場合かを突き止めるため、筆者はさまざまな企業のIT担当役員に、クラウドに適しておらず、オンプレミスに残した方がいい分野について、特に重要なデータの観点から尋ねた。真っ先に考えられるのは、セキュリティに関する問題と、データの所在に関する地理的な制約だ。しかし、システムをオンプレミスに残すことが最も有効な選択肢となる要因も存在する。以下に、挙がってきた論点をいくつか挙げてみよう。
レガシーの呪縛:Dateraの最高技術責任者(CTO)Hal Woods氏はまず、オンプレミスの資産には、特定の部分をクラウドに移そうとすれば非常に複雑な作業になってしまうような、複雑な相互依存が存在する場合があると述べている。「特定のアプリケーションが、オンプレミスで実行する必要のある他のアプリケーションと緊密に結びついている場合は、当然ながらそのアプリケーションと関連するデータベースもオンプレミスで運用する必要がある」と同氏は言う。