矢野経済研究所(中野区)は2月14日、国内のロボティックプロセスオートメーション(RPA)市場に関する調査を発表した。
RRAを“ホワイトカラー”の業務オペレーションに対するソフトウェアロボットでの業務自動化の取り組みと定義。機械学習や人工知能(AI)といった認知技術を活用し、文章、画像、音声などを認識し、これまで人間のみが対応できると想定されていた単純作業、それ以上に高度な作業を人間に代わって処理できるソフトウェアロボットであると説明している。
活用における目的や期待される効果に、生産性、品質向上、人的資源の再細分化、業務の標準化などを挙げている。旧来から進められてきた「物体」を対象とした“ブルーカラー”業務でのロボット活用と業務の自動化と比較し、「情報、データ」を対象としたホワイトカラー業務におけるソフトウェアロボット活用になるとしている。
事業者の売上高をベースとした2018年度の国内RPA市場規模は、前年度の2.34倍となる418億円になるという。カテゴリー別ではRPAツールが前年度の2.64倍の135億円(構成比は32.3%)とRPA関連サービスが前年度の2.22倍の283億円(構成比は67.7%)になる見込みとしている。
2018年上半期は、政府による働き方改革推進を追い風に“RPAブーム”とも呼べる盛り上がりを見せたという。広範な業界、職種でのRPA導入事例が各種イベント、セミナー、メディアで取り上げられ、有力な働き方改革ツールとしての社会的認知度が向上。大手や中堅のユーザー企業を中心に導入が増加し、海外製RPA導入時に課題だったインターフェースやドキュメント、サポート体制の日本語対応が急速に進んだとしている。
2018年下半期は、過度な期待を持ったユーザー企業が導入後に失望感を感じるケースが散見されるという。RPA適用における課題やリスクが認識され、ブームに収束の兆しが見えるとしている。
先行したユーザー企業の多くが導入製品や依頼先ベンダーの再検討、RPA活用を前提とした環境や業務、ガバナンスの整備に着手しつつ、AI、光学文字認識(OCR)、ビジネスプロセス管理(BPM)などの周辺技術と連携させた精度向上、自動化領域の拡大などに取り組んでいるとしている。
また、多くのシステムインテグレーター(SIer)、ITコンサルティング企業がRPA事業を開始。自社サービス内にRPAを組み込んだシェアードサービスセンター(SSC)事業者やビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)事業者、RPA人材の育成、派遣事業を展開する人材派遣業者など、多様な事業者が市場に参入する状況にあるという。
ユーザー企業のRPA導入動向には変化が表れているという。2016年から2017年頃の市場黎明期では、半数以上が最適な製品選定や自動化対象の業務選定など、実現難易度が低いニーズだったという。概念実証(PoC)実施後にプロジェクトを凍結し導入を保留するユーザー企業もあったとしている。
市場における導入事例の蓄積や有力メーカーによる日本法人設立、製品やドキュメントの日本語化、サポート体制の日本語対応が進み、今後は投資効果の可視化、組織運営や業績向上に直結する成果、高度なコンサルティング能力などを求めるユーザー企業が増加するという。
2019年度以降では、大手や中堅ユーザー企業の多くは何らかの領域でRPAを導入する可能性が高いと予測。大手ユーザー企業の全社展開や海外拠点への展開、中堅、中小企業への導入が進む一方で、価格競争によりRPAツール、製品の単価は下落していくという。
活用業務プロセス改善コンサルティングや運用保守サービスなど、製品導入後のサービスは拡大傾向で、伸び率が高くなっていくという。2022年度の国内RPA市場規模を2017年度の約4.5倍となる802億7000万円まで拡大すると予測している。
カテゴリー別で見ると、RPAツールが構成比21.2%となる170億2000万円。RPA関連サービスは78.8%で、632億5000万円に成長するとしている。
RPA市場規模推移予測(出典:矢野経済研究所)