世の中に出回っているニュースは、クラウドの導入が進んでいるというものばかりだ。そういった記事ばかりを読んでいると、企業はクラウドへの全面移行に向かっていると思い込んでしまうかもしれない。しかし、その認識は間違いだ。
確かに、IDGのレポートでは、73%もの企業が1つ以上のアプリケーションまたはインフラの一部をクラウドに移行したというデータが紹介されている。しかしこれは、企業が持っているアプリケーションやインフラのごく一部にすぎない。多くの企業は、今も何らかの形でオンプレミスのインフラを維持している。
このクラウドの時代に、オンプレミスの自社データセンターを持つ意味はあるのだろうか?実のところ、これだけ大きく取り上げられているが、クラウドはまだ比較的新しい技術だ。クラウドのセキュリティやパフォーマンスがオンプレミス技術に匹敵する水準になっている場合も多い一方で、アプリやインフラをクラウドに移行しない方がよいこともある。
Gartnerのバイスプレジデント兼最上級アナリストDavid Cappuccio氏は、「あらゆるワークロードには違いがあり、それぞれ異なるビジネス上の要件やメリットが存在する」と述べている。「それらの要因を考慮せずにアプリケーションやサービスの最終的な配置を検討すれば、選択を間違った場合の移行のデメリットは、メリットを大きく上回ることになるだろう」
企業がクラウドへの移行を検討する際には、コンプライアンスやセキュリティ、遅延、復旧にかかる時間、可用性、データの場所などをはじめとするさまざまな要因に関する条件を考慮する必要がある、と同氏は言う。それらのことを検討すれば、現在であっても、オンプレミスのインフラの方が合理的だという結論に至る場合も多いだろう。
この記事では、企業が自社のデータセンターに置いていることが多い10種類のものを紹介する。
1.負荷を予測可能なワークロード
クラウドの最大の売りの1つは、弾力性と柔軟性だ。しかし、柔軟性を確保するには相応のコストがかかることが多く、負荷を予測可能なワークロードには、最適な選択ではない場合もある。
World Wide Technologyのデータセンター担当グローバルプラクティスディレクターBrent Collins氏は、「極めて予測可能性が高く変化が少ないものは、多くの場合、クラウドよりもオンプレミスの方が安価だ」と述べている。「機材を購入し、予測可能な形で長期間にわたって高い利用率で稼働できるのであれば、その作業はおそらくオンプレミスで行った方が安くつくだろう」
2.独自のレガシーアプリケーション
長年にわたって事業を営んできた企業であれば、大抵の場合、クラウドとは相性の悪いレガシーアプリケーションが残っているはずだ。PCM.comのソリューションアーキテクトVictor Kruse氏によれば、通常、この種のアプリケーションには、厳重なセキュリティが必要とされるという。「これらのアプリケーションは移植性が低く、リファクタリングが難しい場合が多い」とKruse氏は付け加えている。「これらが新たなテクノロジで進化しなかった」