成功を収めるデジタルトランスフォーメーションとは、どんなものだろうか。コンサルティング会社のContinoとTech London Advocates(TLA)の調査では、成功に必要な3つの要素として、明確なビジョン、テクノロジーとビジネスの強固な連携、スタッフを関与させる強力な取り組みが挙げられた。
このレポートでは、欧州のデジタルトランスフォーメーションイノベーター上位20社とされる企業のデジタルリーダー20人を取り上げている。米ZDNetは、そのうち2人の最高情報責任者(CIO)に、デジタル化を定着させる鍵と考えられるものについて話を聞いた。
変化の激しい顧客の要件を満たす能力を身につける
住宅金融組合のNationwideでCIOを務めるGary Delooze氏は、変化を主導する際には話し合いが重要だと語る。同社がトランスフォーメーションに着手したとき、Delooze氏とその同僚は外部の専門家と会い、自分たちの経験と、他社との協力から得られたベストプラクティスの教訓の両方について話した。
「『灯台プロジェクト』は、デジタルトランスフォーメーションに大きなメリットがあることをビジネス部門に示すものだ」(Delooze氏)
提供:Nationwide
こうした対話は、デジタルトランスフォーメーションの成功と失敗の違いをはっきりさせることが目的だった。Delooze氏がすぐに気づいたことの1つは、デジタル変革が良い結果につながるという明確な証拠をビジネス部門が求めていることだ。同氏はこの証拠を「灯台プロジェクト」と呼ぶ。これらの灯台は、デジタル化が短期間で見事な成果を出し、組織の他の分野にも利益を生む可能性があることを、企業全体に示す。
Delooze氏は、新しい働き方が成果の改善につながる可能性があることを実証する実験に力を入れた。同氏は地理的に分散した組織横断型のデジタルハブを作り出し、これらのハブでは少数の従業員が住宅金融組合のメンバー向けのサービスや製品に取り組んでいた。
初期のハブはスウィンドンにある本社を拠点としていたが、現在ではさまざまな場所に分散しており、スウィンドンだけでなくロンドンやインドでも、チームメンバーが自宅や同社の支店ネットワークで働いている。
これらのハブで働く人々は、アジャイルアプローチを使用して、新製品の機能を反復的かつ迅速に提供する。Delooze氏は、実験を自社のクラウドへの取り組みと連携させることで、技術革新を迅速にテストできると述べた。
同氏は次のような例を挙げる。イングランド銀行は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生したとき、住宅金融組合は顧客に住宅ローン返済の猶予を認めなければならない、と発表した。Nationwideはその問題に迅速に対処する必要があることを認識していたが、同社のコールセンターには顧客からの申請が殺到した。
「そこで、ただちに次のような方針を打ち出した。『実際にこれをオンラインでやる必要がある。この手続きのために顧客を電話で何時間も待たせるわけにはいかない。そのためのデジタルジャーニーの構築に注力しよう。どれだけ速く構築して稼働を開始できるか試してみよう』」とDelooze氏。
この規模のプロジェクトを2年前に実施していたとしたら、ITチームは要件収集の段階から、設計、構築、テスト、実装までに6カ月を要していただろう。アジャイルな働き方が会社の文化に浸透していたため、Delooze氏はデジタルハブをセットアップして、潜在的なソリューションの実験をクラウドで開始することができた。