基幹システムのクラウド化は現実的方法で--日本オラクルの三澤社長

國谷武史 (編集部)

2021-11-05 16:34

 日本オラクルは11月5日、クラウド事業に関するメディア向け説明会を開催した。会見した取締役 執行役社長の三澤智光氏は、オンプレミスで稼働するミッションクリティカルシステムのクラウド化に言及し、現実的課題を踏まえた進め方や同社クラウドサービスの優位性を強調した。

日本オラクル 取締役 執行役社長の三澤智光氏
日本オラクル 取締役 執行役社長の三澤智光氏

 三澤氏は、2022会計年度(2022年5月31日期)の事業戦略における重点施策の1つに、企業や政府機関などを支え、社会インフラともなっているミッションクリティカルシステムのクラウド化を位置付ける。説明会で三澤氏は、まず長年オンプレミスで稼働し続けてきたミッションクリティカルシステムを最新のIT環境に変革する「モダナイゼーション」の問題点を指摘した。

 ミッションクリティカルシステムは、その稼働に何らかの支障が起きれば、大小さまざまな影響が広範囲に及びかねないため、本質的に高い信頼性や高い安定性、高い安全性が必須条件になる。システムは、それらの実績があるアーキテクチャーによって構成され、用途も運用手法も確立されている。そのために、開発や構築時にそれほど考慮されていなかった利用や活用への対応が難しいという側面を伴う。

 昨今重視されるデータ活用など新しい用途にミッションクリティカルシステムを対応させる必要性からクラウド技術などが注目され、方法として極論的には、古いミッションクリティカルシステムの全てをクラウド用に再開発することも市場で提唱されている。

 だが、「人・物・金」のあらゆる経営資源を集中処理するミッションクリティカルシステムのワークロードを、分散型アーキテクチャーを前提するクラウド環境に変えることは、多くの弊害を伴うとする。例えば、集中と分散という異なる環境でどう整合性を図るかが課題になる。三澤氏は、現実解の方法として広く採用されるシステム基盤をIaaSに乗せ替える「リフト」であっても、整合性の点から「データベースは従前の性能が発揮されにくい」「可用性が低下しかねない」「アプリケーションの再テストに過大な負荷を伴う」などの問題が起きているとする。こうした課題を解決することで、ミッションクリティカルシステムのモダナイゼーションがようやく本格化すると述べる。

ミッションクリティカルシステムをクラウド化する課題(出典:日本オラクル)
ミッションクリティカルシステムをクラウド化する課題(出典:日本オラクル)

 ただ、保守期限が迫るなどのさまざまな理由でミッションクリティカルシステムを刷新する企業はあり、同社としてもIaaS/PaaSサービスの「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の利用を訴求する。この点で三澤氏は、OCIの提供開始が競合他社より遅く、そのためにサービス提供基盤に用いる技術が競合他社より新しいことが優位であるとした。

 その理由として、(1)データセンター内およびデータセンター間を広帯域の高速ネットワークで接続していること、(2)仮想化技術の工夫によりハードウェア水準の処理性能を担保していること、(3)データベースベンダーとしての知見を生かした高速ストレージの利用――を挙げるとともに、標準でデータを暗号化することによる高い安全性を強調している。

 OCIのインフラについても上述の優位性を担保すべく、提供開始時から早い段階で「Gen2」にアップグレードしたとする。これにより先述の課題の解決、また、従量課金によるコストの適正化やマネージドサービスによるパッチ適用自動化といった運用負荷の軽減を図るとし、ミッションクリティカルシステムをOCIにリフトするだけでもユーザーにメリットがあると述べる。利用方法についても、OCIのサービス基盤などを顧客のデータセンターに構築して利用する「アットカスタマー」モデルや、アプライアンスの「Oracle Exadata」などをOCIと連携させるものなど、バリエーションの広さも特徴に挙げている。

ミッションクリティカルシステムをクラウド化における選択肢(出典:日本オラクル)
ミッションクリティカルシステムをクラウド化における選択肢(出典:日本オラクル)

 OCIを提供体制は、10月時点として世界全体で31リージョンが稼働し、さらに13リージョンの新設を計画する。地球温暖化対策として、2025年までに全社で使用する電力を全て再生エネルギーに切り替える予定で、既に欧州のリージョンではこれを完了したという。ミッションクリティカルシステムに関する国内のビジネスでは、クラウド化支援サービスやOCI認定技術者育成サービスの拡充を図るとした。

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