Amazon Web Services(AWS)は12月1日、同社最大の年次イベント「re:Invent 2021」をスタートさせた。依然としてコロナ禍の混乱が続くが、今回は例年の会場とする米国ラスベガスとオンラインでのハイブリッド型で開催。基調講演には新しく最高経営責任者(CEO)に就任したAdam Selipsky氏が登壇し、クラウドがビジネスインフラに中枢を担うフェーズに進化していると説いた。
AWSの新CEOとしてre:Inventに初登壇したAdam Selipsky氏
Selipsky氏は、前任のAndy Jassy氏のAmazon CEOへの就任に伴い、TableauのCEOから転身。2005年から2016年までAWSに在籍したSelipsky氏は、今回のCEO就任により同社に復帰した形となる。Selipsky氏の基調講演は、Jassy氏のスタイルを踏襲しつつ、クラウドコンピューティングがいかに企業や組織のビジネスを貢献してきたのか、そして現在はその中枢を担う存在として進化していることを丁寧に説明した。
AWSにとって2021年は、ストレージサービスの「S3」を2006年に開始してから15周年の節目になる。Selipsky氏は、EC2のコンピュートやストレージ、データベースといったInfrastructure as a Service(IaaS)領域からアナリティクスや機械学習、近年のエッジコンピューティングに至るまで、同社がクラウドサービスの裾野を広く、深く進化させてきたこと、また、従量課金モデルといったITソリースの新しい消費モデルを普及させてきたことなどに触れた。
企業や組織のビジネスにとって既にクラウドコンピューティングは不可欠になっているが、Jassy氏は2020年の同イベントの講演まで、ITの総予算の数%しかクラウドに充当されておらず、まだまだクラウドがメインストリームの存在ではないと主張してきた。Selipsky氏も今回の基調講演では同様の趣旨を述べたが、同社がサービスを開始して15年、企業や組織でクラウドサービスが本格的に利用され始めて約10年という歴史の中では、エコシステムパートナーが10万社以上となるなど、着実にクラウドが中枢を担う存在となってきたことを強調している。
そうした状況を指し示す新たな発表の1つが、証券取引市場を運営する米Nasdaqとの協業強化になる。NasdaqとAWSの協業は2008年に開始され、相場情報の配信から収益管理、定期報告、市場運営などの各種システムをAWS上に構築してきた。ゲストで登壇したプレジデント CEOのAdena Friedman氏は、さらなる取り組みとして、北米のデータセンターに「AWS Outpost」を導入したAWSのローカルリージョンを構築し、より高速の情報配信サービスを展開していくと表明。加えて、2022年から段階的に証券取引場システムそのものをAWS上に移行させることを明らかにした。世界を代表する証券取引場が基幹システムをパブリッククラウドに移行する初の事例になると見られている。
Nasdaqは世界的な証券取引所としては初めてパブリッククラウドへの移行を表明